お知らせ

急性冠症候群とは

急性冠症候群(ACS)は冠動脈の動脈硬化を基盤として生じた臨床症候群です。1992年に冠動脈内膜のプラーク(動脈硬化の強い病巣)の破錠とそれに伴う血栓形成により冠動脈の内腔の高度狭窄または閉塞に起因する病態をFuster達がACSと定義したことによるとされており、ACSには急性心筋梗塞、不安定狭心症、心臓突然死が含まれます。冠動脈の器質的狭窄が心筋虚血の原因となる(慢性)安定狭心症と、器質的狭窄に加え冠動脈血栓が関与する不安定狭心症や急性心筋梗塞では予後は大きく異なりこの分類の意義は大きいと考えられています。ACSを惹起するプラークの形成には冠危険因子といわれる加齢、喫煙、高血圧、糖尿病、脂質異常症などが起因し、そのコントロールが不良な場合(加齢を除く)破綻しやすくなります。ACSの診断には慢性安定狭心症同様、症状、身体所見から疑い検査などをすみやかに行うことです。(生命予後を良好とするため早急な治療が望まれるからです。)ACSの典型的な症状は前胸部や胸骨後部の重苦しさ、圧迫感、息がつまる感じ、焼け付くような感じなどの訴えが多いですが、時に単に不快感として訴えられることもあります。顎、頸部、肩、心窩部、背部、腕への放散する痛みを伴うこともありますが、注意が必要なのは胸部の症状を伴わずにこれらの部位にのみ症状が限局することがあることで、知っておくことは大切です。これらの非典型的な症状や軽い症状が重篤なACSの症状であることがまれではないからです。非典型的な症状は高齢な人、糖尿病、女性ではしばしばみられます。特に高齢の人の場合全身けんたい感、食欲不振、意識レベルの低下などが唯一の症状のことがあります。女性では嘔気、嘔吐などの消化器症状や上記の放散痛も多く認められます。ACSでは、急性心筋梗塞で症状が強いことが多いとされており参考にされる必要はありますが、ACS全体でみると症状の強さと重症度は必ずしも一致しないことがわかっています。
身体所見では我々循環器医はバイタルサインといわれる血圧、脈拍などの測定や聴診上の異常な心音の出現や、呼吸音の異常の有無などにより重症度を評価します
そしてACSを疑った場合すみやかに心電図を記録し、ACSのどのタイプかを診断し、同時に心筋障害の有無、程度の測定のため血液検査を行います。この場合心電図で明らかな変化を認める急性心筋梗塞と診断した場合、冠動脈の閉塞を早期に開通し心筋の障害範囲を少なくするために血液検査の結果を待つことなくそれが行える病院に患者さんを送ることになります。心電図、血液検査で評価が難しい場合、一定の間隔のあと再度血液検査でACSを判定します。しかしこの場合でもACSである場合を念頭においていたずらに時間をとることなく前記の病院へ送ることが患者さんのためには良いと考えられます。
要はACSは生命を左右する恐い病気です。冠危険因子をお持ちの人はACS予防のため改善できるものは早くから行って下さい。
ACSで加療され、病院から退院されてきた患者さんは、再発、心不全の発症予防のためそして良好な生活を送っていただくようにしっかりと診療させていただきます。(ACSを治療した病院と連携をとりながら)

 

お知らせの一覧を見る