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高齢者高血圧の降圧目標は?

2017年1月に日本老年医学会・老年学会から高齢者の定義の見直しについての提言があり、65〜74歳を准高齢者、75歳以上を高齢者とすることが提唱されました。これは65歳以上の人たちの身体・精神機能が10〜20年前より改善しており、平均的には若返りが認められることを科学的に示したものとなっています。そして今後も健康寿命を保ち、さらにそれを延ばすために高血圧(生活習慣病)の管理は重要となっています。現在我が国においては、65〜74歳の3人に2人、75歳以上の5人に4人の方が高血圧に罹患しているとされています。したがって我々が行う高血圧の診療そのものが高齢者の方の診療を意識するようになります。その高齢者の方には多様性があり(骨折、フレイル、頻尿、認知症、諸種の臓器の機能障害、ポリファーマシーなど)それらを考慮した血圧値を求めることになります。原則として最近では、140/90mmHg以上を高齢者の方の降圧薬の開始の基準としており、75歳以上の方で収縮期140〜149mmHgや6mの歩行が完遂できない程度の虚弱の方は個別に判断することとしています。また降圧の目標として65歳以上の方は140/90mmHg未満、75歳以上の方は150/90mmHg未満としますが75歳以上の方で忍容性があれば140/90mmHgを目指すこととしています。
一方で2015年におこなわれた降圧に関する研究で高齢者の方(脳卒中、糖尿病の方を除く)においても収縮期の血圧が120mmHg未満に降圧された方が140mmHg未満に降圧された方よりも、心血管のトラブル(心不全の抑制が主体で、脳卒中には差はない)が抑制されたとの、医療者にとってインパクトのある報告がされました。この研究には議論がありますが、今後の高血圧の方の降圧目標にある程度の影響を与える可能性があります。

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