お知らせ

喘息とCOPDのオーバーラップ症候群(ACOS)

わが国では高齢化社会を反映して、COPDや高齢者の喘息はよく認められる呼吸器の疾患となっており、共に約500〜600万人の方が罹患されていると推定されています。
両疾患とも気道の炎症を基本とする病態ですが、その炎症の性質は異なり、薬に対する反応性の違いなどから異なる疾患と考えられています。しかし両疾患の合併は、中高齢発症の喘息患者さんで喫煙歴のある場合に多く、COPDと考えられる患者さんでも喘息因子をもっておられる場合もあり、両疾患の鑑別は難しく、ACOSと呼ばれています。ACOSでは、症状が増悪する事が多く、生活の質が低くなり、経年的な呼吸器能の低下が速く、死亡率が高いことが知られています。ACOSに有病されている方は、両疾患の15〜20%にのぼるとの報告もあります。
ACOSの診断は喘息と考えられている患者さんで、40才以上で長期の喫煙歴(10pack-years以上)があり、慢性の咳・痰や労作時呼吸困難を示される場合にはその可能性を考える必要があります。その場合、追加として呼吸機能の検査や高分解能CTを行い、診断する事があります。一方でCOPDと考えられている患者さんでも、喘息の既応やアトピー素因の存在、夜間や早期に見られる発作性の喘鳴や咳、息切れや痰などが認められ、息をはいたり、血液の検査をする事で喘息と同様な結果が認められる場合はACOSを考える必要があります。
ACOSの治療は禁煙が最も重要で効果的です。その上で喘息やCOPDに使われている吸入のステロイドに長時間作用性気管支拡張薬を併用する事になります。また労作時呼吸困難などにより日常活動の低下が見られるため、運動療法を中心とする呼吸リハビリテーションも重要です。インフルエンザワクチンなどのワクチン療法による増悪予防も大切です。

以上、概略を説明しましたが、診断されていない方も多く、けっして予後の良い疾患ではないので、これらに該当するものがあれば、われわれ医療機関を受診して下さい。

お知らせの一覧を見る