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飲酒と循環器疾患

飲酒と循環器疾患との関連を説明する前に、日本人における飲酒状態をみてみると、平成28年度の報告によると、生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している人(1日当たりのエタノール換算での摂取量が男性で40g以上、女性で20g以上と定義されている)の割合は、男性で14.6%、女性で9.1%です。この割合は女性では以前の報告より増加傾向にあります。
そして男性では50歳代、女性では40歳代が最も多く飲酒していました。以上の事をふまえ説明しますと少量の飲酒(日本酒1合(エタノール換算で約25g))程度は脳梗塞や冠状動脈疾患の発症や死亡のリスクを下げますが、2〜3合以上の飲酒はおおむねそのリスクは上昇します。
これはJカーブ型のリスク(リスクの大小がJの字に似ている)といいます。またリスクが最小となる飲酒量は冠状動脈疾患のほうが脳梗塞よりもやや多いとされています。(2〜3合(冠状動脈疾患)、1〜2合(脳梗塞))ここで注意しておきたいところは、不規則的(機会飲酒)に多量の飲酒をする機会がある人は虚血性心疾患のリスクが高くなることが報告されており、アルコールの平均的な摂取量のみならず、一度にアルコールを過剰に摂取するという事も有害ですという事を知っておいて下さい。
一方、脳出血、くも膜下出血などの出血性脳卒中については、飲酒量が増えるに従ってリスクは上昇します。また、飲酒量が増えると血液検査をするとγ-GTP(肝機能のマーカーとされていますが酸化ストレス(動脈硬化に結びつく)の重要なマーカーです)の増加が認められますが、これが高値の人は少量の飲酒でも脳梗塞の発症のリスクが高くなります。一方、大動脈の疾患(大動脈瘤、大動脈の解離など)は出血性の疾患ですが、出血性の脳卒中とは異なり中等度の飲酒(おおむね日本酒3合程度まで)でリスクが低くなるとの新しい知見があります。心房細動(不整脈で多くみられる)は飲酒量が増加(特に3合以上)するとその発症が有意に高くなります。したがって以前からいわれているように、自分の健康状態を鑑みてお酒の量はほどほどにと言うことですね。

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