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サルコペニア(嚥下筋に関して)パートU

今回は摂食嚥下関連筋の筋肉量減少や筋力低下により生じるサルコペアによる摂食嚥下障害について説明します。その前に老嚥という言葉を知っていますか?これは健常高齢者における摂食嚥下機能の低下のことであり、摂食嚥下障害ではありません。原因は色々あり、たとえば味覚・嗅覚の低下、唾液分泌量の減少、咳反射低下、歯牙数減少、低栄養、薬物による副作用などです。老嚥のスクリーニングにはEAT-10を使用すると有用です。

EAT-10

  1. 飲み込みの問題が原因で体重が減少した。
  2. 飲み込みの問題が、外食に行くための障害となっている。
  3. 液体を飲み込む時に余分な努力が必要だ。
  4. 固形物を飲み込む時に余分な努力が必要だ。
  5. 錠剤を飲み込む時に余分な努力が必要だ。
  6. 飲み込むことが苦痛だ。
  7. 食べる喜びが飲み込みによって影響をうけている
  8. 飲み込む時に食べ物がのどに引っかかる。
  9. 食べる時に咳が出る。
  10. 飲み込むことはストレスが多い。

上記の@ーIをそれぞれ5段階(0点:問題なし 〜4点:ひどく問題)で点数をつけ、合計点数が3点以上であれば老嚥や摂食嚥下障害の可能性が高いと判定します。サルコペアによる摂食嚥下障害とは全身と嚥下関連筋の両方にサルコペアを認めることと定義されています。原因は加齢、活動、栄養(飢餓)、疾患(感染症悪性腫瘍など)によるとされています。また上記は設嚥下肺炎の大きな原因とされています。(高齢者の肺炎の8割前後は誤嚥によるとする報告があります。)また肺炎によって入院した患者さんが不適切な対応をされると、嚥下障害はひどくなり経口摂取困難となることがあります。たとえば誤嚥性肺炎の診断のもと、「とりあえず安静臥床」にされ(活動低下による二次性サルコペニアの原因となる)また「とりあえず禁食」に加えて抹精静脈栄養で1日300kcal程度の水電解質輸液といった不適切な栄養(栄養低下による二次性サルコペニアの原因)摂取がおこなわれ、またそれに肺炎などによる疾患によるサルコペニアが加わるのです。したがってこれらのいわゆる医原性サルコペニア予防は極めて患者さんにとって重要なのです。そのために入院直後に全身状態や嚥下機能を評価して、早期の離床と早期経口摂取が可能かどうかを判断したうえで、可能であれば入院当日から早期離床と早期経口摂取を行うとされています。 そして栄養に関しては、1日エネルギー必要量=1日エネルギー消費量+エネルギー蓄積量(1日200〜1000kcal)で体重や筋肉量を増加させる目標をたてます。活動は廃用性筋萎縮の予防を目的とした軽負荷のトレーニング(レシズタンストレーニング)をくみ入れ、併用します。
そして疾患に対しては栄養状態の悪化防止を目標に1回15〜30kcal/kgのエネルギーを目安とするのです。これらを行って摂食嚥下障害の進行を防ぎ、回復にもっていく事が重要です。
食べる事は非常に重要で楽しみとなり、それが阻害されるとQOLは著しく低下します。私が訪問診療をおこなっている人の中にも摂食嚥下の障害された方は、しばしば見受けられ、また外来に来られる患者さんにもおられます。したがって冒頭近くで説明した老嚥にあてはまる人は、嚥下訓練などのリハビリをしっかりおこなって進行を防いで下さい。

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