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老年症候群(高齢者の病気の特徴をふまえて)

世界保健機関(WHO)の定義によると高齢者とは65歳以上の人のことをさし、65〜74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と呼んでいます。しかし、この定義には医学的・生物学的に明確な根拠はありません。我が国においてはこの高齢の定義が現状に合わない状況が生じており、これに該当する人は違和感を感じる事が多いと推察されています。
このようなことから日本老年学会・日本老年医学会では65〜74歳の人を准高齢者、75〜89歳の人を高齢者、90歳〜の人を超高齢者と呼ぶことを提言しています。現在の高齢者は10〜20年前と比較し、加齢に伴う身体機能の出現が5〜10年遅延し、特に65〜74歳の人においては、心身の健康が保たれており、活発な社会活動が可能な人が大多数を占めています。内閣府の調査でも70あるいは75歳以上を高齢と考える意見が多い結果となっているのです。また健康寿命(平均寿命から寝たきりや認知症等の介護状態の期間を差し引いた期間)は個人が自立して生活できる寿命であり、最近では平均寿命との差が男女とも縮小しており、このことも前述の高齢の定義変更の提言が現実的であることの根拠と考えられています。高齢者に多い疾患の特徴をあげると、@個人差が大きいA慢性の疾患が多いB症状が非定型的な事があるC1人で多くの疾患を持っているD薬に対する反応が成人と異なるE臓器の機能の低下が潜在的に存在しているF防御力が低下しており、疾患が治りにくいG複数の医療機関から多くの薬が処方されているなどがあります。Bにおいては、例えば肺炎を発症しても発熱・咳・痰がなく食飲の低下、意識障害のみを呈する事があり、心筋梗塞に羅患した際に全く胸痛を訴えない人がいるなどがあります。Gの問題点は薬剤有害事象の発現と密接に関係しています。高齢者の疾患は、一旦慢性化すると次第に治療に反応しづらくなります。高血圧症、脂質の異常、糖尿病などは、動脈硬化発症の危険因子として重要であり、喫煙、肥満を含め少なくとも准高齢者までの期間における治療が必要と考えられます。脳出血・脳梗塞・心筋梗塞などに羅患すると介護が必要となる事が多く、上述した事が大事なのです。また看護・介護の視点からみると、認知症・転倒・失禁・などは病気の本態が何であれ、高齢者に比較的特徴且つ重要なものと考えられます。
高齢によくみられる症状として、難聴、視力障害者、頻尿、めまい・ふらつき、息切れ、睡眠障害、物忘れ等が多くみられます。日常生活においては「夜中にトイレで起きるようになった」「会話が聞き取りづらいことがある」「散歩にいくと息が切れる」「人の名前が出てこない」等の訴えです。その他にも手足のしびれ、転倒、骨折、尿失禁、発熱、低体温、頭痛、胸痛、腹痛、浮腫(むくみ)、便秘、肥満、やせ、脱水など多種に及びます。原因はさまざまですが、治療と同様にケアが必要となる一連の症状・所見を指し、これらは近年「老年症候群」という名前が提唱されています。老年症候群の治療においては、薬物療法が根本的治療となることは少なく、ADLが改善するという実証的な成果は不足していますが、行動療法、リハビリテーションが必要とされています。また予防としては寝たきりになる三大病変である脳血管障害、認知症とならびに大腿骨頚部骨折の予防が重要とされています。またロコモーティグシンドローム、サルコペニア、フレイルは老年症候群と密接に関係するためその対策も必要です。したがって高齢になってから発症する疾患(高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸結症、脂肪肝、胆石、慢性腎不全、狭心症あるいは心筋梗塞、脳血管障害など)を防ぐために下記のようなことをお勧めします。
a禁煙する bよく歩く cよく寝る d健診・検診を受ける e適度な飲酒を心掛ける f家族や隣人と会話を持つ g不必要な薬は飲まない h生活習慣病について十分な診療を受ける i多くの種類の食品をバランスよく食べる。
以上高齢者の特徴をふまえ、老年症候群のさわりを説明しました。機会があればもっとくわしく説明します。

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