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高血圧の管理および治療は?

前回は、血圧値による高血圧の分類を示しました。今回はそれに対する管理・治療をどうするのかについて説明します。高血圧の治療の目的はいうまでもなく高血圧の持続によってもたらされる脳心血管病の発症・進展・再発の抑制および死亡の減少であり、高血圧によるQOLの低下を抑制することです。降圧治療には生活習慣の修正を含む非薬物治療と薬物療法があります。非薬物治療には、ご存知のように減塩を中心とした食事療法、運動、アルコール制限、肥満の改善などの生活習慣の修正、睡眠時無呼吸症候群に対する治療あるいは二次性高血圧に対する手術を含めた治療が含まれます。これらは有意な血圧の降下をもたらすため、正常血圧者以外のすべての人に推奨されます。また降圧治療を行う場合、その人のもっている脳心血管病の危険因子(年齢、性別(男性)、喫煙、糖尿病、脂質異常、慢性腎臓病、肥満など)を考慮し、それによってリスクを層別化し、予後を推定したうえでの治療が重要となります。
診察室血圧にもとづいた脳心血管病のリスク層別化を下記に示します。

高血圧
130〜139/80〜89
mmHg
T型高血圧
140〜159/90〜99
mmHg
U型高血圧
160〜179/100〜109 mmHg
V型高血圧
180/110
mmHg
リスク第一層
予後影響因子がない
低リスク 低リスク 中等リスク 高リスク
リスク第二層
年齢(65歳以上)、男性、脂質異常症、喫煙のいづれかがある
低リスク 中等リスク 高リスク 高リスク
リスク第三層
脳心菅病の既応、心房間動、糖尿病、蛋白尿のある慢性腎臓病のいづれかあるいは、またはリスク第二層の危険因子が3つ以上ある
高リスク 高リスク 高リスク 高リスク

つぎにわれわれ循環器医を受診された時の初心時の血圧レベルにもとづく高血圧管理計画を下記に示します。

降圧目標は脳心血管病の発症及び死亡リスクを低下させるために多くの研究で下記のような血圧値が推奨されており、我々もそれを患者さんとともに目指すこととなります。

  診察室血圧 家庭血圧
75歳未満の成人
脳血管障害者
冠状動脈疾患者
慢性腎臓病(蛋白尿陽性)患者
糖尿病患者
抗血検薬服用中
<130/80
mmHg
<125/75
mmHg
75歳以上の高齢者
慢性腎臓病(蛋白尿陰性)患者
特定の病態をもった脳血管障害者
<140/90
mmHg
<135/85
mmHg

しかしながら降圧に関しては患者さんの個々の病態は同一ではありません。たとえば75歳以上でも合併症はほとんどなく、非常に元気な人もいますし、75歳未満であっても認知症・フレイル・各種病気などにより終末期をむかえている人もいます。(当然75歳以上の人でもそのような人は多くおられますが)したがって個々の患者さんに対する降圧は前述の目標を前提とし、なおかつ個々の病態を勘案しながらおこなわないといけません。
高血圧は奥が深く、その他にも色々な場合が想定されます。何よりもその人の生活の質を維持し不幸な事柄がおきないようにする事が目標です。そのつもりで頑張っています。
参考までに(疑問があれば診療時に何でも聞いて下さい)

 

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