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鉄欠乏性貧血について

鉄欠乏性貧血はみなさんよく聞かれると思いますが、わが国で最も頻度が高い貧血です。鉄欠乏とはそもそも生体内に含まれる鉄(およそ3〜4g)がいろいろな原因で失われることです。(鉄需要の増大、摂取量の減少、吸収の低下など)健常な成人男性では1回1mgの鉄が失われ月経のある女性ではさらに0.6〜0.8mgは多く失われます。食品からの鉄の吸収率は8〜10%のため、男性では1回あたり10mg、月経のある女性では15mg鉄が必要となります。しかし2003年の調査では日本人の1日あたりの鉄摂取量は8.1mgとなっており、鉄の摂取量は特に月経のある女性では困難な状況になっているといえます。そのため日本人女性全体では約1割が鉄欠乏による貧血となっており、月経のある女性では約2割がその貧血となっています。鉄欠乏性貧血を生じる原因としては、月経のある女性では月経過多、子宮筋腫。ポリープ、子宮内膜症などが多く、閉経後の女性あるいは男性では消化管からの出血が多く考えられます。したがって血液検査などによる診断後は内科・婦人科などを受診しその原因を知ることが大切です。自覚症状としては動悸、息切れ、めまい、立ちくらみ、頭重感、耳鳴り、疲労感、起床時のだるさ、眠気、イライラ、集中力の低下、神経過敏、筋肉・関節痛、ニキビ、肌荒れなど一見不定愁訴と思われるものも多く出現します。
また欠乏症は夕方から夜間にかけての下肢不快感(特に臥床後)がおこり、下肢を動かすことで症状が収まり睡眠障害の原因となるむずむず脚症候群の主要説因と考えられており、氷かじりなどの異食症も特徴的な症状です。治療としてはまずは予防として鉄を多く含む食品(牛肉、豚肉、鶏肉、レバー、赤身の魚(これらはコレステロールも多く含むため摂取を多くしすぎないようにする)や海藻類、ひじき、ホウレンソウ、大豆、切り干し大根、果物(レーズン、プラム)などを多くとることです。
治療が必要となる貧血では、原則鉄剤の経口摂取となります。以前はこの場合、お茶の摂取はできるだけしないようにといわれたことがあるかもわかりませんが、鉄欠乏時には消化管からの鉄吸収率が亢進しているため、摂取されてもかまいません。鉄剤内服の副反応としてはきけや嘔吐などが時に出現することがありますが、内服を眠前に変更したりすることなどによって内服が可能となる事が多くみうけられます。それでも内服継続が困難な場合や内服では貧血の回復が追いつかないあるいは胃潰瘍、十二指腸潰瘍などがある場合は鉄剤の静脈注射による鉄の補充を行います。ただし鉄剤の静脈注射使用後は鉄による粘膜のブロックができて鉄の吸収がされなくなるため経口の鉄剤の併用は意味がないことを知っておいて下さい。こららの治療(おもに経口鉄剤)により約6〜8週間で貧血の指標であるヘモグロビン量は6〜8週間で正常化してきますが、鉄の体内での貯蔵を反映するフェノチンが正常化するまですなわち通常4〜6ヶ月治療を継続することです。貧血が回復し治療をやめた場合でも月経のある女性では再度の貧血の出現に注意して半年に1度ぐらいの定期的な検査が必要です。見覚えのある症状が出現してきたときも、検査をすることが大切です。
また予防のために市販薬などのサプリメントを内服することも可能です。(名前はあげませんが)要は鉄欠乏症貧血と診断された場合は、その原因が何かを知ること、それからそれをふまえて治療する事が大切です。知っておいて下さい。
次回は潜在性鉄欠乏症について説明します。

 

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