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家庭血圧測定でわかることおよびその重要性

現在日本における高血圧の分類、治療方針は6月のウェブサイトで説明しました。今回は、血圧の治療にはその測定がほぼ必須となってきた家庭血圧について説明します。わが国には4000万台以上の家庭血圧計が普及しており、ほぼ一家に一台存在している状況となっています。うちわけをみると高血圧の人の約77%が保有しており、高血圧でない人はその約40%が所有しているようです。これほど普及している理由は、一つには個々人の血圧に対する意識が高まったことが大きく影響しています。そして医学的には家庭血圧の予後予測能すなわち臨床的価値が、診察室血圧より高いことが明らかになってきたからです。家庭血圧測定によってわかることまたその有用なことは、降圧薬服用による過剰な降圧、あるいは不十分な降圧を評価できることがあります。ことに服薬前の測定は、薬の効果の持続時間の評価に有用です。また以下のようなことがわかり重要です。
@白衣高血圧
診察室で測定した血圧が高血圧であっても家庭血圧などの診察室外血圧では高血圧ではない状態のことです。本来この用語は未治療者において使用されるものであり、治療中の人においては白衣現象または白衣効果を伴う高血圧とされています。白衣高血圧は診察室血圧で140/90mmHg以上の高血圧と診断された人の約15〜30%が相当し、その割合は高齢な人に多くみられます。白衣高血圧は臓器の障害は軽度で脳心臓血管病の予後も良好とする報告が多くみられますが、非高血圧の人と比較すると将来的な脳心血管病をきたすリスクが高いため注意深い経過観察が必要です。
A仮面高血圧
診察室での血圧が非高血圧値であっても診察室外の血圧では高血圧を示す状態です。この場合も治療されていない人と治療中の人を対象としており、治療中の人の場合、治療中仮面高血圧とされています。仮面高血圧は早朝、昼間、夜間など診察室外血圧が上昇している時間帯が異なり、病態はやや多様でその原因を考えないといけない事が多くあります。仮面高血圧は非高血圧を示す人の10〜15%、降圧薬でコントロール良好な高血圧の人の約9〜23%にみられます。仮面高血圧を示す人の臓器の障害や脳心血管病発症のリスクは、非高血圧の人や白衣高血圧の人と比較して有意に高く、持続性高血圧の人と同程度となり、また高血圧による臓器障害が進行していることがわかっています。したがってこれらの人(特に高血圧治療中の人)は、治療を強化するだけでなく、二次性高血圧の可能性はないか、改善すべき生活習慣はないかなどの原因の究明も重要です。
B早朝高血圧
診察室血圧が140/90未満で、早朝に測定した家庭血圧の平均値が135/85mmHg以上の場合早朝高血圧とします。早朝高血圧は夜間の高血圧から移行する場合と朝方に急激に血圧が上昇する場合があります。早朝高血圧は脳心血管病発症の有意なリスクとなり、臓器障害も進行しており、将来の要介護のリスクが高くなります。
C夜間高血圧
家庭血圧計などで測定した夜間の血圧の平均が120/70mmHg以上の場合、夜間高血圧と定義します。(最近では家庭血圧計でも夜間の血圧が測定できるものがふえており、夜間血圧測定が可能です)夜間血圧は一般的には昼間の血圧の変動幅より少ないですが、その平均値の増加は脳心血管病発症のリスクになり、認知機能、身体機能の低下と関連しています。
D昼間高血圧
診察室血圧や家庭血圧が正常でも職場などでのストレスにさらされている昼間の血圧値が135/85mmHg以上の場合、昼間高血圧と定義します。精神的・身体的ストレスは血圧に影響をあたえ、健診時や診察室血圧は正常でも上昇します。肥満や高血圧家族歴の人に多いという特徴があるようです。
上記以外にも家庭血圧測定により、夜間の血圧が昼間の血圧に対してどの程度低下しているかあるいは、夜間の脈拍数が昼間とくらべて少ないかなどを知ることにより脳心管血病の発症のリスクが高くなるかどうかもわかってきています。さらに夜間交代勤務者(シフトワーカー)の人は交感神経の活動が十分に低下しないため、昼間の睡眠の時間帯は夜間の睡眠の時間帯とくらべ血圧低下が生じにくく、その勤務が長年続いた場合脳心血管病発症のリスクが増加する可能性があると考えられます。
その他にも家庭血圧測定の有用性が証明されていることが多々あります。わからないこと、疑問に思われることがあれば、受診時に御相談下さい。詳しくお答えします。

 

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