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安定狭心症患者さんの治療の変化は

私が医師になって数年たったころに心筋梗塞や狭心症と診断された患者さんにカテーテルという管を冠状動脈という心臓の血管に挿入し血栓をとかす薬物を流したり、あるいは狭くなっている部位を広げるという経皮的冠動脈形式術(PCI)という治療がわが国でおこなわれるようになりました。そしてその治療はまたたく間に全国に広がり、各施設間で治療をおこなった患者さんの数を競うようになっていったのです。しかし本当に個々の患者さんにPCIをおこなう適応があるのかという議論はおろそかでした。(画像的に狭ければ広げるのが狭心症に対する当然の治療という考えが主流であった。)しかし2007年に狭心症はあるが増悪などは認めない、いわゆる安定狭心症の患者さんに対してPCIをおこなう治療とPCIをおこなわず薬物・生活療法のみでの治療の予後に対する比較研究がおこなわれました。結果は心筋梗塞などの発症に対する両者の治療には差がないというインパクトの大きな報告となりました。その研究報告以降わが国を含む各国における狭心症に対する考え・治療法に変化がおきました。1つは冠状動脈疾患の治療は物理的な狭窄の解除ではなく至適薬物療法と呼ばれる厳密な薬物療法や生活の改善をおこなうリスクのコントロールであると認識された点です。現在ではこの考えは安定狭心症だけでなく不安定狭心症や心筋梗塞の患者さんまでにもおよぶようになっています。もう1つの変化は狭心症などで生ずる冠状動脈の狭窄は、冠状動脈の撮影時におこなう肉眼的な評価だけでは不十分であるという認識を循環器内科医がもつようになったことです。これは肉眼的な評価だけでなく、狭窄を生じている部位より遠位を流れる血流が心臓が機能するのに充分でない(虚血という現象)かを観血的・非観血的な検査で評価するということに通じます。そして虚血が明らかになった場合は、PCIや外科的治療をおこない、そうでない場合は至適薬物療法をおこない経過をおうことが、推奨されているのです。したがって冠状動脈疾患の患者さんでPCIなどをおこなわない人に対する薬物療法や生活習慣の是正が予後の上で重要となってきます。薬物療法はわれわれ循環器内科医が個々の患者さんに至適と思われる投薬をおこないます。虚血の進行・再発をおさえることを重点におこなうことを第一に考えます。そしてその中には血圧を130/80未満、LDL-コレステロール(脂質)を70mg/dl以下、糖尿病の人ではHbAlcを70%未満を目標に治療するなども含まれるのです。したがって患者さんには食事療法、適正な体重の維持、禁煙、節酒、有酸素を中心とする適度な運動などをしていただくことが必要かつ重要となります。
上記に概略記載したように冠状動脈疾患の患者さんに対する観血的な治療(PCI、外科手術)が明らかなのは論を俟ちませんが、非観血的な治療の重要性が増しています。日頃の生活に留意されると伴に参考にして下さい。

 

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