お知らせ

患者さんの質問に対して

我々医師が診療するうえで、患者さんからほぼ毎日、そして色々な事を質問されます。そこで今回は患者さんからよく聞かれることを私の専門領域を中心にお答えします。
@高血圧の薬は一生服用しないといけないのか?
高血圧は脳卒中を始めとする脳血管心管の最大の危険因子です。したがって私達医師が降圧薬の服用が必要と判断・説明しそれを同意されたうえでの治療ですから、活動的な生活を送られている人は年齢にかかわらず服用して下さい。(合併症予防そして健康寿命の延仲のために)
ただし生活習慣の改善などにより血圧低値が続く場合、降圧薬の減量・休薬ができることはります。またフレイル、認知症などを患われた場合はその人の状態によって服薬の有無を判断します。人生の終末期をむかえられた場合(予命1年未満など)服薬は益とはなりませんので中止します。
A下の血圧が低いのではないか?
後齢になられると血管が硬くなり(動脈硬化)下の血圧(拡張期血圧)は降圧薬服用により、上の血圧(収縮期血圧)が低下すると同様に低下します。狭心症などを患われている人からの質問に多いのですが、冠状動脈に狭窄が残存していたり、他に高度な動脈硬化病変を認める場合を除いて特に拡張期血圧をある値より低くしたら疾患のリスクが高くなるということは証明されていません。高血圧の学会においても拡張期血圧の基準は設けていません。
したがって注意しながら、そして自覚症状などをお聞きしながら治療を行ないますので心配はいりません。
Bコレステロールの薬はいつまで服用するのか?
コレステロール(LDLコレステロール)の高値は高齢者(65才〜75才未満)においても成人と同様に冠状動脈疾患発症の重要な危険因子です。したがって冠状動脈疾患などを発症されていない人の予防効果(一次予防効果)は充分に認められます。二次予防効果(一度上記疾患を発症された人の再発予防効果)は75歳以上の人においても期待できます。またフレイルとなられた場合でも疾患の発症の予防効果はあるとの報告もあります。コレステロール低下薬(スタチン)の予防効果は3〜4年かかるといわれており、それを考えると生命予後が3〜4年以上見込まれる人には治療を考えるとの指針があります。しかしその場合の予後改善効果は短期間であるため、私としては服用して下さいとは言いませんが。いずれにしても予防効果を期待して服用されているので腰をすえて長い目で考えて下さい。論外ですが、薬を服用されてコレステロールが正常値になったからと自分で服薬をやめてしまう人がいます。まったく意味がなく医療費の無駄となりますのでやめて下さい。
C認知症の薬を服用させて下さい。(私は認知症サポート医でまったくの非専門医ではありません)認知症と診断された人に対して、多くの場合対症療法(治す効果はない)として認知症の薬が投与されています。私も投与することはあります。しかし認知症のどのタイプの人に対しても、軽症状態の人に対して投薬により一時的に認知機能を改善させることはあっても、経年的には低下します。(低下速度の差こそあれ)
(フランスでは認知症の薬は効果が明らかではないとのことで保険対象からはずされています。)そして徐々に経口摂取の低下からすい弱、終末をむかえられるという人を多く見ています。
認知症の人の幻覚、暴力、徘徊など(BPSD)に対して私としては投薬することが多く、中等度以上に進行された人に対してはすすんで投薬はしませんし、家族にもその旨お話しています。
大変な苦労となりますが、ご家族が一緒に生活できる間は患者さんに寄りそって尊厳を保ってあげながら生活をされる事がよいのではと考えています。

 

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