お知らせ

末梢動脈疾患とは

末梢動脈疾患(PAD)とは心臓の冠状動脈以外のすべての末梢動脈の疾患を指す用語ですが、一方下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)と同義に用いる事が多くなってきており、PAD=ASOとして説明します。PADは下肢の動脈硬化による動脈の狭窄あるいは閉塞により種々の症状をもたらす疾患です。PADによる症状は無症状から歩行運動によりふくらはぎに疼痛が生じ、休息で軽快いする「間欠性跛行」という症状、あるいは安静時にも疼痛が生じ場合によっては足部などに潰瘍・壊死などを生ずるものなどがあります。診断は四肢の血圧測定をおこない、上肢と下肢の血圧比(足関節血圧/上腕血圧)を足関節上腕血圧比(ABI)として下肢の動脈閉塞の指標に用います。(当院にも測定機器はあります。)
PADは症状の有無によらず、ABIが低値であるほど生命予後は不良です。ある研究では1年間の死亡率は3.8%、脳心臓血管疾患の発症は5.4%と報告しており、常にPADの患者さんはこれらの疾患の危険にされされています。PADの患者さんの治療目標は生命予後の改善と下肢の機能の改善です。PAD発症・進展のおもな危険因子は年齢・性別(60歳以上・男性)、喫煙、糖尿病、高血圧などです。したがってこれらの動脈硬化を進展させる危険因子をコントロールすることが下肢の虚血症状の程度にかかわらずPADの基本治療となります。(修正できない年齢・性別は別として)上述した無症状のPADは症状がないからといって下肢の虚血が軽度というわけではありません。この無症候PADは症候性PADの人の2〜5倍存在すると推測されています。そして両者の心臓・脳血管心疾患の発症のリスクはほぼ同等との報告もあり、ゆえに無症候性PADの患者さんは生命予後改善のために上述した危険因子をコントロールすることが重要となるのです。薬の服用は合併症などを加味して行なうとされており、無症候性PAD=薬の服薬ではありません。間欠性破行を伴う患者さんの基本治療は無症候の患者さんと同様上述した危険因子をしっかりとコントロールすることです。そして次の治療選択は運動療法となります。これは痛みが出るまで歩いて休むことを繰り返す歩行リハビリを少なくとも1日30分、週に3回、3〜6ヶ月間実施することです。この場合通常症状の軽減のための薬物治療も併用します。この運動療法を行えない場合や間欠性破行が患者さんの日常生活を大きく制限している場合には、次の選択として血管内治療(血管の中の狭窄部位をカテーテルなどで広げる)や手術を行うことになります。安静時疼痛を生じる重症下肢虚血(CLI)は2014年頃より米国を中心として包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)と提唱されるようになり、wlfl分類(分類記順は説明しません)を用いて以下のように評価されます。@安静時疼痛があり、高度虚血(wlfl分類)を認める下肢A2週間以上治ユしない潰瘍のある下肢B壊死のある下肢つまり潰瘍・腫瘍のあるPADの下肢はCLTIに含まれることになり、重大な合併症である切断リスクをもった下肢を広く統合する概念となっているのです。CLTLの患者さんは上述したPADの危険因子をしっかりとコントロールすることは不可欠です。そして患肢を救うために血行の再検が必要となりますが、全身状態が不良な人が多く、一次切断や保存的治療しかできない場合のことが少なくありません。
以上PADに関して概説しましたが高齢化社会の到来により、PADの患者さんは増加の一途をたどっています。PADは下肢症状だけではなく、生命予後は不良です。先述したPADの発症、リスク因子をおもちの人はPADのことをよく理解されしっかりと加療または禁煙されて下さい。

 

お知らせの一覧を見る