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認知症と心房細動などの関連は?

アルツハイマー病(AD)は有効な治療薬は経年的にみるとなく、ましてや根本的な治療薬の開発はことごとく頓挫しています。したがってアルツハイマー病を含む認知症に対しては現時点ではその危険因子である背景因子、遺伝性危険因子、血管性危険因子、さらに併存症危険因子を管理できるものは行うのが有効な治療手段として考えられています。背景因子には加齢、頭部外傷、社会的孤立、短い教育歴などが含まれます。この中の加齢は認知症の最大の危険因子で65歳以上は5歳ごとに有病率が倍増すると考えられています。血管性危険因子には、中年期の高血圧、中年期の脂質異常、中年期の肥満、糖尿病、心房細動、心不全、喫煙、運動不足などの生活習慣病があり、これは脳卒中などより生ずる血管性認知症だけでなく、ADの発症に対しても影響を及ぼします。併存的危険因子には、フレイル、低栄養、サルコペニアなどが含まれ重要な問題であり、フレイルは心房細動と伴にその有病率は加齢に伴って上昇し、これらは認知症と伴に共通の基盤を有し、互いに影響しあうとされています。たとえばフレイルと診断されると血管性認知症のリスクは約6倍、ADでは約5倍に達するとの報告があります。また低栄養、低アルブミン血症のみでもADを含めた認知症のリスクは上昇します。加齢に伴って最も多く発症する不整脈である心房細動と認知症の関連も注目されています。認知症の発症率は、心房細動を有さない群と比較して、心房細動を有する群は70歳以降の老年期に急激に上昇することが報告されており、心房細動は認知症の危険因子と認識されています。これには心房細動が原因と考える脳卒中の既応の有る人、脳卒中の既応のない人にかかわらず、心房細動が認知症の危険因子とされており、そのリスクは約1.4倍であったとされています。心房細動には脳卒中を始めとする全身の塞栓症予防のために1962年以降ビタミンKに拮抗する抗凝固薬が使用されてきました。この薬は良い薬であることは確かですが、いろいろな問題点があり、その服用による治療域が充分できていない場合には、認知機能の低下につながると報告されています。またビタミンKを多く含む食品の摂取の制限が必要なため、服用者のビタミンKの濃度は低く維持されています。ところがビタミンK欠乏状態は、骨粗しょう症や動脈硬化を悪化させるだけでなく、認知機能低下につながる可能性が最近注目されています。ビタミンKの摂取量の少ない人は認知機能テスト(MMSE)の平均点が低いことが指摘されているのです。したがってビタミンKの摂取を制限するべきではないと結論づけている報告があります。
となると、この薬の治療域は悪くなり前記によるとそれにより認知機能低下をまねくことになり、その服用に対するジレンマにおちいります。2011年より心房細動に対してこの薬とは異なる抗凝固薬が使用されるようになり使用数が増加しています。この抗凝固薬はその服用により認知症の発症リスクがビタミンK拮抗薬とくらべ約20%低いことが報告されており、服用に際しての注意点はありますが服用しやすい可能性はあります。
以上認知症とフレイル、心房細動などに対する最近の知見を説明しました。
これらの病気をお持ちの人を多く診療する我々もよく考えて対処しないといけないことです。参考までに。

 

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