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不眠症そしてその対策は

夜間不眠症状を有する人の割合は、一般人口の20%以上に達し、日中機能に影響が及んでいると判断される人の割合も10%を超えているとされています。慢性不眠症は高血圧、糖尿病、精神症状(うつ状態)などの発症や憎悪因子となることが知られています。不眠症はその症状(入眠障害、中途覚醒(途中で目がさめる)、早朝覚醒(朝早く目がさめる))とともに、その日中機能への影響(倦怠感、注意集中力の低下など)を把握することが必要です。一般的に不眠症というと入眠障害が思いうかびやすいですが、実際には睡眠の維持の障害と入眠障害が混在していることがおおくあります。
特に高齢の人は生理学的に睡眠が浅く、分断傾向となりやすいため、睡眠維持障害の発現頻度が高くなります。一部に認められる逆説性不眠症(Pl)は、自分が一定量以上の睡眠をとっていることが理解できず眠れないと思い込み、ほとんど一睡もできないなどと訴えられます。
この場合は同伴者からの情報や日中機能を評価(Plでは夜間不眠の自覚的な重症感の割りに日中機能への影響が少ない)する必要があります。(治療を誤った方向に進めないために)
また不眠を考える上で概日リズムの問題の有無 精神疾患との関連の有無などを考えることも必要です。たとえば若年者によくみられる入眠障害のみが多く、睡眠維持障害を欠く場合は睡眠相後退型といわれる睡眠障害で、入眠時間とともに出眠時間(床から離れる時間)の後退が考えられ、逆に高齢者に多くみられる睡眠相前進型の睡眠障害では入眠時間の前進とともに早朝覚醒がみられます。また精神疾患、特にうつ病による不眠も重要です。睡眠障害から発展したうつ症状なのか(興味関心の低下などがよくみられる)うつ病による不眠なのか(この場合悪夢などが存在することが少なくない)を鑑別する必要があります。
その他下肢静止不能症候群(むずむず脚症候群)、周期性四肢運動を随伴する場合、睡眠時無呼吸症候群など不眠を訴えられる疾患群は色々あり(症状の詳細はここでは説明しません)慎重に鑑別する必要があります。不眠症に対する治療としては、まず患者さんが睡眠に対する適切な知識をもたれ、睡眠環境や生活習慣を整えることが必要です。これらは睡眠衛生として、広く知られてきています。詳細は説明しませんが、箇条書きにすると以下のような項目があります。
定期的な運動をする、寝室環境を快適にする、規則正しい食生活をする、就寝前の水分を過剰にしない、就寝前のカフェインは取らないようにする、就寝前の飲酒は逆効果、就寝前の喫煙は避ける、寝床での考え事(特に悩み、翌日の行動を考える)はしない。
などです。上記を軽視して薬物療法を開始しても、十分な効果は期待できません。不眠症の薬物治療はある種の成分を主体とした薬の服薬が今なお多くおこなわれています。(BZDsと呼称されている)BZDsの効果・安定性と限界を考慮した上で服薬される場合は確かに有効です。(この場合はわれわれ医療者が充分に説明する必要があります)
最近では薬価(薬の値段)はやや高くなりますが、BZDsとは薬理作用が違う薬剤が使用されることも増加しており、患者さんに対する適応があるかどうかを考慮したうえで服薬していただくことも多くなっています。 いずれにしても、不眠症の薬は長期間、慢然と服用されることは避けることが必要とされています。(各種の副作用の発現のリスクを勘案して)したがって服薬・睡眠衛生が相まって不眠が緩和される場合は、減量・休薬されることも必要です。
以上不眠症に対しての概略を説明しました。

 

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