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高血圧治療における過降圧(血圧のさがりすぎ)とは

高血圧の治療により下げられた血圧レベルが過降圧であるかどうかは、降圧治療をうけ、そのレベル以下に血圧が下げられた場合に得られることが予想される利益と起こることが予想される有害事象(脳卒中、心筋梗塞、死亡、腎不全など)との得失 、バランスを評価することです。そしてそれは色々な基礎疾患をもたれている高血圧の人において血圧の低下により有害事象の発見に注意をするということにつながります。そのためには降圧薬を服用される人は脳心臓病のリスクがどの程度あるのかを知っておく必要があります。すなわちリスクは下記のようなものがあります。年齢(65歳以上)、男性、脂質異常症、喫煙、脳心血管病の既応、心房細動、糖尿病、蛋白尿のある慢性腎臓病。これらによりリスクの層別化をおこなうとリスク第一層(リスクとなるものがない)、リスク第二層(年齢65歳以上、男性、脂質異常症、喫煙のいずれかがある)リスク第三層(脳心血管病の既応、心房細動、糖尿病、蛋白尿のある慢性腎臓病のいずれかまたはリスク第二層の因子が3つ以上ある)となり、加療をうける前の血圧と合わせて低リスク、中等リスク、高リスクの人と判断することになります。(血圧レベルの詳細は説明しません)
そして上記をふまえた上で、過降圧を検討します。
この場合、血圧レベルの評価は心血管障害のリスクや臓器の血流の低下などからの検討により、収縮期血圧(SBP)を用います。(ここでいうSBPは診察室での値となります。) 低リスクの人はSBPが130mmHgまでは降圧はよく、循環器系の臓器(脳、心、腎など)に機能障害が認められなければSBPが120mmHgまでは安全に降圧できるとされています。SBPが120mmHg未満に降圧となった場合には過降圧となる可能性があります。高リスク高血圧の人も初期治療において130mmHgまでの降圧は問題はありません。心臓の肥大した高血圧の人をSBP130mmHg以下に降圧したある研究では心不全の発症により死亡が増加したとの報告がありますが。SBP130mmHgよりSBP120mmHgまで降圧しても過降圧とはならない場合がほとんどですが、低リスクの人にくらべ降圧に伴う上記臓器の機能に注意しながら降圧を行うことになります。SBP120mmHg未満ではやはり過降圧となる可能性があります。高齢(75歳以上)の人は各々の個人差に留意しないといけませんが、おおむねSBP130mmHgまでは安全とされています。SBP130mmHg未満に降圧となる場合は過降圧となる可能性があり、また40mmHg以上の降圧の場合は循環器系臓器の機能の低下が起こる場合があり、注意が必要となります。糖尿病、慢性腎臓病、脳血管障害、冠動脈瘤をお持ち人は臓器の血流や臓器の低下に注意は必要ですが、いずれの人もSBP120mmHgまでは安全に降圧できるとされています。SBP120mmHg未満では過降圧となる可能性があり、注意が必要です。ただし上記に記述したすべての病態の人において、すでに130mmHgあるいは120mmHg未満にSBPがコントロールされており、低血圧による症状や所見がなければ降圧を緩める必要はないとされています。すなわち到逹血圧のレベルだけでなく、降圧の幅や降圧速度も有害事象の発生に影響するので、循環器系臓器の機能の低下に注意する必要があるということになります。(これはわれわれ医療者が細心の注意を払う必要があるということです。)いずれにしても血圧の治療(降圧)には注意が必要です。
当院あるいは循環器系の診療所に受診される事をお勧めします。最後に日本腎臓病学会では腎臓病の程度にかかわらずSBP110mmHg未満の降圧は行わないように推奨しています。参考までに。

 

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