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家族性高コレステロール血晶(FH)とは

以前にFH以外で遺伝性の濃厚な原発性高脂血症である家族性複合型高脂血症(FCHL)について説明しました。今回は冠動脈疾患のリスクがさらに高いFHについて説明します。
FHは常染色体優性遺伝性疾患であり、ヘテロ接合体とホモ接合体があり、多くはヘテロ接合体のFHです。FHの診断には、ホモ接合体の確定診断を除き遺伝子診断は必須ではなくここでは説明しません。FH(成人15歳以上)ヘテロ接合体診断基準は以下となります。
・高LDL血症(未治療治時のLDLーC値180mg/ll以上)・腱黄色腱(手背、肘、膝等またはアキレス腱肥厚)あるいは皮膚結節性黄色腫・FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(2親等以内・男性55歳未満、女性65歳未満で発症)
上記のうち2項目以上認められる場合、FHと診断します。この診断基準はホモ接合体にも当てはまるとされていますが遺伝子診断が必要です。またアキレス腱肥厚はX線読影により9mm以上の肥厚とされています。近年超音波検査での評価(6mm以上の肥厚)も可能ですが、まだ標準化はされていません。
皮膚結節性黄色腫には眼瞼黄色腫は含みません。またFHと診断するためには脂質の異常をきたす他の疾患(糖尿病・甲状腺機能低下症・ネフローゼ症候群・薬剤性など)を鑑別することは当然必要となります。FHヘテロ接合体は生下時から高LDLーC血症が持続し、未治療の場合男性で30〜50歳、女性で50〜70歳の間に心筋梗塞、狭心症などの冠動脈疾患を発症することが多く、そのために早期の診断が非常に重要となるのです。またFHはけっしてまれな疾患ではなく200人〜500人に一人の割合でヘテロ接合体の人が存在し、おしなべると30万人以上のFHの人が我が国に存在すると確定されているのです。FHホモ接合体は血清総コレステロール値600mg/ll以上、小児期からみられる黄色腫と動脈硬化性疾患、両親がFHヘテロ接合体である特徴を有します。したがって厳格な治療を行ない、若年死を予防する事が大切です。FHには厳格な脂質の管理が必要となり、LDLーC値を100mg/dl未満とすることが望ましいとされています。しかしFHの場合この管理目標を達成することが困難な人が多く、その目標値に到達しない場合には、治療前値の50%未満を目指すことも許容されています。不幸にして冠動脈疾患を発症された人は二次予防として70mg/dlのLDLーCの管理目標値を目指します。
これらの脂質の管理には生活習慣の改善とともに薬物治療が必要となります。生活習慣の改善は、以前にも記した様に、禁煙、身体活動による適正な体重の維持、アルコールの過剰摂取の制限、肉の脂身、動物油、鶏卵、果糖を含む加工食品の大量摂取をひかえ魚・緑黄色野菜などを含めた野菜、大豆、未精製殻類の摂取を増やすなどがあります。しかしFHヘテロ接合体の人は生活習慣の改善だけでは十分な脂質管理が得られない場合があり、通常薬物治療を併用します。しかし薬物治療を最大限併用しても血清総コレステロール値が250mg/dl以下に下がらない場合には、血漿交換療法を行なうことがあります。FHホモ接合体の人は、生活習慣の改善、薬物療法の併用ではLDLーC値が下がらないことが多く、幼少期より血漿交換療法を継続しておこなう必要が高くなる割合が多く認められます。そしてこれらの治療を行ない、冠動脈疾患を主とした動脈硬化性疾患の発症を防ぎ良好なQDLをできるだけ長く保っていただく事が目標であり必要です。
検診でLDLーC値が180mg/dl以上を指摘された場合、FHの精査が必要です。放置せず早めに、当院においで下さい。しっかりと診療致します。

 

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