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睡眠時無呼吸症候群・循環器疾患との関係は?

睡眠時無呼吸症候群は生活習慣病と密接な関係があります。たとえば糖尿病患者さんの3〜4人に1人は中等度以上の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を有しいているとされており、脂質異常とOSAの関連も多数の報告で示唆されています。

肥満とOSAは双方向性の関係があることは理解できると思います。循環器疾患と睡眠時無呼吸症候群との間にも密接な関係があります。今回はこのことについて説明します。上記の因子などで生じる動脈硬化は血液中の低比重リボタンパク(LDL)が酸化という現象をうけて(酸化ストレス)酸化LDLに変性し、血管壁を障害し、種々の現象を経てプラークという粥状の物質になり、それが壁に沈着することにより生じます。この場合、血管壁などには慢性炎症が生じます。

そのため動脈硬化は慢性炎症病とも言われています。睡眠時無呼吸においても、酸化ストレスは増大しており、炎症により血管の内膜・中膜の障害を生じやすくさせ、動脈硬化を惹起させるのです。

睡眠時無呼吸が血圧を上昇させることは以前にも幾度かWebで記載しました。夜間の血圧の下降がみられなく朝方までその傾向が続くこと、治療抵抗性高血圧の大きな原因となること、二次性高血圧であることなど説明しました。

これには無呼吸により前述の動脈硬化の進展に加え、無呼吸から呼吸が再開する直前に交感神経が強く働くことが考えられています。そしてその働きに遅れて血圧や心拍数が上昇するというものです。無呼吸の重症度の指標には無呼吸・低呼吸指数(AHI)が用いられますが、AHIと高血圧との関連は種々報告されています。(無呼吸による低酸素が高血圧と深い関連があるとする報告もある)大動脈疾患と睡眠時無呼吸の合併も多いことが知られています。これは動脈硬化と血圧上昇に睡眠時無呼吸に伴う胸腟内左の上昇が発症要因と考えられています。無呼吸による胸腟内の陰圧により、大動脈に16.3mmHgの圧力がその拡張させる方向に働くという報告もあります。健常人において無呼吸が大動脈径の拡大に関連していることは知られています。腹部大動脈瘤に関しては、その年次拡大が無呼吸が重症であるほど速いとされています。

虚血性心疾患は、冠動脈のプラークでの動脈硬化が背景にありますが睡眠時無呼吸による凝固系の亢進が生じることもその一端を担っている可能性はあるとされています。冠動脈内に冠動脈を広げるためにステントを留置した後の冠動脈の再狭管やその他の心血管イベントに無呼吸が関連しているという報告や、夜間に発症する狭心症発作や心筋梗塞に無呼吸が多いといった報告は、上記の機序を想起させるとされています。冠攣症性狭心症については無呼吸が関連しているとの報告はありますが、不明な点があり、発生機序には議論があります。総じて虚血性心疾患への関係は比較的重症の睡眠時無呼吸に限られるとされています。睡眠時無呼吸には頻脈性の不整脈も徐脈生不整脈も合併が多いことは種々の報告でみられます。これには無呼吸においては自律神経(交感神経、副交感神経)の活性が亢進しているためとされています。睡眠時無呼吸の人に夜間の突然死がみられるのは、無呼吸に伴う交感神経活性の急な高まりが感与しているとの報告があります。頻脈性不整脈では心房細動の発症及び再発と無呼吸との関係に現在注目が高まっています。これには無呼吸による心房の形態異常の出現や胸腟内左の陰圧による負荷が心房に影響しているとの指摘があります。徐脈性不整脈はそれが夜間に生じる場合、無呼吸による低酸素が原因との報告があります。心不全においては中枢性睡眠時無呼吸(CSA)の出現が高まります。CSAはAHI=5と軽症であっても無呼吸のない群と比較して死亡リスクが2.14倍高まったという報告があります。心不全は種々の心疾患の終末像であり、それに対する最適な治療法が無呼吸に対する治療と同時に行われる事が必要となります。以上、無呼吸と代表的な心疾患に関して、その概略を説明しました。無呼吸は種々な疾患と関係します。留意して下さい。

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