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糖尿病その発症予防に有効なことは

糖尿病は全身の動脈硬化を促進し、心筋梗塞、脳梗塞、下肢の閉塞性動脈硬化症などの大血管障害や網膜症や腎症など細少血管障害の原因となります。また細菌感染に対する抵抗力の低下をもたらします。

近年では膵臓癌や肝臓癌などの悪性腫瘍の合併、歯周疾患、骨折、認知機能障害リスクの増大など多面的な疾患の合併が指摘され怖い病気です。今回は糖尿病の発症予防に有効とされているものを紹介・説明します。まずそのまえに糖尿病の発症を予測するうえで最も強力な因子は血糖値や血液検査中のHbA,cであることを知っておられる人は多いと思います。

空腹時血糖値が100〜125mg/dlとHbAに5.7〜6.4%の両方を満たす人は両方とも正常な人と比べ、発症リスクが約30倍にも上昇するという報告があるのです。その他にも血中脂質、尿酸、カリウム、フェリチンなども発症リスクと関連することは御承知下さい。

本題の発症予防に寄与する因子について簡潔に順に説明します。肥満と糖尿病の発症には強固な関係が存在し、小児期から成人早期の過体重(特に成人早期の過体重)は将来の糖尿病発症と強く関連します。したがって生涯にわたる体重コントロールは必要ですが、特に成人早期の体重を適正に維持することが重要です。生活習慣改善で2kg程度やせることができれば、糖尿病の発症リスクを減らせることができるとされているのです。身体活動等はそれが高い人は低い人にくらべ糖尿病の発症リスクは低くなり、この場合有酸素運動のみならず筋力トレーニングも有効です。一方テレビの視聴時間や日中の坐位時間の長いことは発症リスクとなります。

食事においては総エネルギー摂取量を適正化した食事は発症予防に重要です。三大栄養素でみてみると、低炭水化物食は糖尿病の発症予防において相反する報告があり、一定の見解は得られていません。蛋白質は動物性蛋白質の摂取は発症リスクを増加させるが、植物性蛋白質は女性において発症リスクを低下させるとされています。脂質においては不飽和脂肪酸は発症リスクの低下と関連します。飽和脂肪酸の発症リスクとの関連は現在認められていません。個々の食品においては未精製穀類、豆類、ナッツ類や果物、緑黄野菜、牛乳を含めた乳製品やヨーグルトの摂取などは発症リスクを低下させるとされています。食習慣では朝食を摂らない生活や早食いは発症リスクを増加させるとの報告があります。飲料ではアルコールはアジア人においては適量とされている飲酒の範囲でも発症リスクの低下はみられず、そのため飲酒は推奨されていません。砂糖など人工甘味料を含んだ飲料は発症リスクを増加させるとされています。一方コーヒーやお茶(緑茶)は糖尿病の発症リスクの低下が示されています。水の摂取についての報告は少ないですが、発症との関連がなかったとの報告があります。受動喫煙を含めた喫煙は糖尿病発症の独立したリスクであることが確立しています。そして喫煙量と発症リスクとの関連には量反応関係が認められています。(喫煙量が多いほど発症リスクが高くなる)喫煙をすると体重増加により一時的に発症リスクは増加しますが、長期的にはリスクが低下します。(禁煙は重要です)

生活面では睡眠は、日本人においては7〜7.5時間の睡眠を取る人の発症リスクが最も低く、6.5時間未満の人や長時間睡眠の人の発症リスクは増加します。また睡眠の質においては、入眠困難や睡眠の維持困難、1日1時間以上の昼寝、中等症〜重症の睡眠時無呼吸の人の発症リスクは増加します。精神的なストレスの強い人やうつ傾向の人はそうでない人にくらべ発症リスクは有意に高いと報告されています。労働環境では、交替生勤務(主に夜勤で働く人)の発症リスクは、日中のみに働く人にくらべ発症リスクが高いと報告されています。よって生活面においてもできる範囲での適正な注意は必要です。

以上、糖尿病の発症リスク及びそのための予防についての概略を記述しました。食事、運動を中心とした生活面での是正が大切であることがおわかりになると思います。参考にして下さい。

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