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循環器疾患・便秘症によるリスクは

便秘は平成28年度国民生活基礎調査では人口1000人あたり男性は24.7人、女性は45.7人みられると報告されています。60歳未満では女性が圧倒的に多いが、60歳以降は男性も急増し、80歳以上では女性と同等にみられると示されています。ある調査によると、51.5%の人が便秘の自覚があり、その30.9%が緩下剤を服用していたとのことであり、訴えが多い割には適切な対応をされていない人の割合が多いとの結果があります。

便秘症は、その人の生活の質(QOL)を大きく障害しており、その改善により身体的QOLのみならず精神的QOLも向上させます。2010年に慢性便秘症の人の生存状態をそうでない人とともに追跡調査(約15年間)した報告によると慢性便秘症の人の生存率が有速に低下しており、医療関係者の便秘に対する意識に変化が生じました。

循環器疾患と便秘との関連では、虚血性心疾患においては便秘症の人のそうでない人に対する相対的な危険度を比較すると(ハザード比という)1.2倍リスクが高まる傾向がみられ、肥血管障害は4回に1回以下の排便する人の場合そうでない人とくらべハザード比は1.9と有意な上昇を認めていることが、わが国の大規模調査で報告されており、排便障害が循環器系疾患の発症リスクであることは明らかとなっています。アメリカでの閉経後女性に対する調査では、心血管疾患の発症率は、ハザード比では軽度(日常生活に支障はない)便秘1.09、中等度(日常生活に多少支障がある)便秘1.49、重度(日常生活が困難なほど支障がある)便秘2.00であり、便秘が高度になるほど心血管患者発症のリスクとなることが示されています。同国の別の観察研究では脳梗塞発症のハザード比1.19と示されており、便秘がリスクとなることが報告されています。リスクとなる原因については、排便に伴ういきみや腸内細菌の変化(便秘による)による慢性炎症などが関係している可能性が考えられています。確かに血圧においては高齢者では排便中と排便30分後の収縮期血圧の上昇が確認されているのです。逆に疾患でみてみると脳血管障害者には便秘が多いことは多数報告されています。同様に心不全者においても、その25〜30%に便秘がみられると報告されているのです。これは心不全による静脈の圧の上昇により種々の機序の関与により消化管の運動が障害され、排便障害が生じるとされているのです。

最近では不整脈に対するカテーテルアべレーションという治療により、まれに神経障害(迷走神経)による胃不全マヒが生じ、排便障害を増加させることがあるとの報告があります。これは心血管疾患の発症を逆に高める可能性があります。

したがって上記に記述してきたように便秘症を改善させることは脳心血管疾患の発症の予防を含めたQOLの向上に大切です。

便秘症の改善には以前Webに記載しました。参考にして適切な対応をされて下さい。

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