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大動脈瘤とは
大動脈瘤は大動脈の壁の一部が全周性または局所性に拡大または突出した状態と定義されています。
全体にわたって拡大したものは大動脈拡張症といわれています。大動脈の成人の正常径は、胸部で30mm、腹部で20mmとされており、壁の一部が局所的に拡張(こぶ状、あるいはのう状)した場合、または直径が正常径の1.5倍(胸部45mm、腹部30mm)以上に拡大(紡鐘状)した場合に大動脈瘤とし、それに満たない拡大は瘤状拡張と称します。瘤の発生部位により胸部大動脈では、胸部大動脈瘤(TAA)、腹部では腹部大動脈瘤(AAA)胸部と腹部に連続する胸腹部大動脈瘤(TAAA)があります。症状はTAAでは咳や息切れ、嚥下痛、嚥下困難、嗄声をAAAでは持続的または間欠的な腹部拍動感や腹痛、腹部不快感を自覚することがあり、瘤の圧迫により食事摂取時の腹満感から食欲低下をきたすこともあります。大動脈瘤の診断にはCT、MRI、エコー、胸・腹部x線などの画像検査が中心におこなわれ、血液検査の診断に寄与する割合は少ないです。しかし大動脈瘤などの大動脈疾患の人はその危険因子である高血圧症、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症、肥満、喫煙などを有していることが多く、リスク管理をされるうえでは血液検査は重要となります。大動脈瘤に対する治療は内科治療と外科治療が瘤の進行度などにより選択されます。一般的にはAAAでは@動脈瘤の最大短径が男性55mm以上、女性50mm以上Aのう状瘤B半年で5mm以上の瘤径拡大のうちいずれかがある場合、TAAでは@最大短径が55mm以上Aのう状瘤B半年で5mm以上の瘤径拡大のうちいずれかがある場合には侵襲的(外科的)治療を検討することになります。上記でない場合は3ヶ月〜1年ごとにCTでの拡大の有無などを検査しながら、内科的(薬物的)治療を厳格におこなう必要があります。
内科的治療は動脈硬化危険因子に対する治療です。すなわち上述した高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、喫煙、糖尿病、心不全、冠動脈疾患、頚動脈疾患などに対する管理、治療が中心となります(詳細は略)
残念ながら薬物治療による瘤拡大抑制は証明されていないからです。
侵襲的な治療には血管内にステントグラフトを留置する血管内治療と人工血管に置換する外科的治療などがあり、瘤の性状とを検討して選択することになります。要はどの治療にしろその目的は大動脈瘤の破裂などによる生命の危機を防ぐことにあります。今回大動脈瘤と密接な関係があり生命の危機となる大動脈解離(3層構造の大動脈が中膜のレベルである長さにおいて2層に剥離した状態)については説明しませんでした。
大動脈瘤は症状がなく、検診などで発見される事も多くあります。しかし命にかかわる疾患です。周知されて下さい。