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ブルガダ症候群とは

ブルガダ症候群疑いとの検診などでの診断で時々患者さんが紹介されてこられます。今回はブルガダ症候群について説明します。ブルガダ症候群は心電図検査において特徴的な所見を認め、致命的となりうる心室細動(VF)や心肺停止の既応、失神などの症状を認める有症候性ブルガダ症候群と臨床的な所見を認めない無症候性ブルガダ症候群に判別されます。東アジアの人に比較的多く認められ、我が国においては、その特徴的な心電図の所見を有している人は0.1〜0.3%存在することが報告されています。臨床症状は日中よりも夜間に出現しやすく、安静時や就寝時、夕食や飲酒後、発熱時などの迷走神経(自律神経)の緊張する状態の際に多く認められます。ブルガダ症候群の男女比は9:1と男性に多く、また血縁者に突然死を認める人が20%程度いることが報告されており、一部に遺伝子の異常のかかわりがあることが判明しています。ブルガダ症候群の心臓のイベント(多くは心停止、突然死)の発生率はVFの既応のある人は年に8〜10%、失神のみの既応のある人では年に約0.5%無症候の人では年に0〜0.5%と報告されています。無症候および失神のみ既応のある人の心臓のイベント発生率は低いのですが、前記のようにイベントは多くは心停止や突然死であり、それらの人のイベントを発生させるリスクを厳格に判断しなければなりません。(リスクは高いものから低いものまでありますがここでは記載しません。ただし心肺停止の既応やVFの既応は最も高いリスクであることは明らかです。)また無症候性ブルガダ症候群であった場合でも経過中に有症候に変化する可能性があることから失神などの症状出現時にはもちろんですが、最低年に1回の診察が必要と思われます。
治療は有症候性ブルガダ症候群、無症候性ブルガダ症候群とも日常生活の指導をしてもらうこと、そして必要に応じて植込み型除細動器(ICD)の移植となります。生活において知っておくことは過度の飲酒は避けること、発熱時にはVF発作が起こりやすいため、速やかに解熱剤の服用を行なうこと、前記した失神が出現した場合にはただちに受診していただくことなどがあります。不整脈薬の服薬は不整脈の発作を惹起する可能性があるため必要としません。ICD植込みはブルガダ症候群の人の突然死予防に有効であることが証明された治療方法です。心肺停止の既応やVF既応のある人はICD植込みが当然必要となりますが、無症候の人に対する植込みは、心イベントのリスクを慎重に検討し、その上で適応の判断をすることになります。ICD植込みはきわめて有用な治療法ではありますが、ICDの不適切作動などの合併症が発生する割合も少なくなく、それにより患者さんのQOL(生活の質)を低下させることがあるからです。薬物治療は前記したことまた、突然死予防に関しての研究報告は充分ではありません。したがってICD植込み後に頻回にICDが作動する症状の人に時に服薬していただく場合があるとの位置づけになります。ブルガダ症候群について概略を説明しました。検診などで指摘された場合は、循環器医へ受診して下さい。

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