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たこつぼ症候群とは

たこつぼ症候群は1990年に広島市民病院の佐藤光先生が報告されたもので、今では世界中で広く認識されるようになったものです。たこつぼ症候群は一本の冠動脈が流れる心臓の領域以外の部分にも認められる一過性の心臓の壁運動異常であり、急性期には心臓の左心室造影であたかもたこつぼを思わせる形態(収縮期)を呈することが多く(たこつぼ症候群の80〜90%です。)胸痛、動悸、息苦しさ、失神などの自覚症状を有し、心電図変化は急性冠症候群(狭心症、心筋梗塞)と類似しています。(急性期では)
一過性の心臓の壁運動異常であり、自然経過で壁運動が改善することもあり予後は良好であるとされていましたが、近年の多くの報告により、院内での死亡率は5〜6%(急性心筋梗塞とほぼ同等)と示されており、決して予後は良好でないことが認識されています。
たこつぼ症候群の発症の誘因はストレスが多いとされています。悲しみや不安などの感情的ストレス、手術侵襲などの身体的ストレスによって引き起こされることが多いのですが、近年楽しい出来事(誕生日パーティー、結婚式、好きなスポーツチームが試合に勝った)によっても発症することも認識されています。たこつぼ症候群の急性期の合併症としては、急性心不全、僧帽弁閉鎖不全、心原性のショック、心室頻拍などの不整脈、血栓の形成、心破裂などが重篤なものとしては、あげられます。そしてその予後としての死亡の発症率は前記であり、心不全、ショックなどが大きな要因であると考えられています。たこつぼ症候群の予後を不良とさせる因子は多くの報告がありますが、その一部を示します。
○男性:たこつぼ症候群の発症は高齢の女性に発症が多いとされていますが、男性の場合、女性とくらべて約2倍の死亡率の上昇が報告されています。○心臓の壁運動の異常:壁運動の異常が心尖部(心臓の先端)を含む領域に認められるタイプ(80%〜90%)はそれ以外の壁運動の異常を認めるタイプ(10%〜20%)にくらべ発症から6ヶ月の死亡率が高いとされています。(壁運動が改善後の6ヶ月以降の死亡率は両者では変わらない)○右室の壁運動低下の合併:左心の壁運動の低下が右室の壁運動の低下を合併することがあり、この場合急性心不全の発症が多く予後が不良のことが多くなります。◯急性の精神疾患の合併、入院時の血液検査値の異常が強いことも予後不良となる因子と考えられています。たこつぼ症候群は死亡する可能性のある疾患であり、5〜20%が治療後に再発するとされているため、治療後の再発予防は必要です。我々がよく心不全の人に使用する薬に再発を予防する効果があることが多く報告されており、その薬を服用してもらうことが大切です。たこつぼ症候群は発症時には心電図検査や心エコー検査では確定診断できなく、冠動脈造影が診断には必須となります。当院を含め私が医師として仕事をするようになってからも数人のたこつぼ症候群の人を経験しました。さいわい全員が軽快治癒されています。また佐藤先生の主催される勉強会にも何度か出席させてもらいました。なつかしい思い出もありますが、気をつけなければいけない疾患として胸部症状の強い人には常に意識からはずさないようにしている疾患です。

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