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女性の動脈硬化性心疾患の現状およびその主要な危険因子

わが国における男女別死亡割合では、心不全などを含めた心疾患と脳血管障害を合わせた死因は男性の22.3%と比べ女性は26.8%と高く、悪性腫瘍の24.4%よりも高率です。(平成26年度・人口動態統計)そのうちわけをみると、心筋梗塞の発症率は閉経前後を含め女性の発症率は男性にくらべ低く、死亡率も同様に低くなっています。しかし心筋梗塞発症後の死亡率は女性は男性より高いと報告されています。これは日本人女性の高齢化が進んでおり、高齢になるほど心筋梗塞の発症率、死亡率が増加することが一因と考えられています。日本人の脳梗塞発症率は加齢とともに増加し、死亡率と伴に心筋梗塞と比べ男女差は縮小しますが、女性の割合は低くなっています。
しかし急性脳梗塞をおこされた人の入院期間、発症期および退院時の状況などを含めた病態は男性より女性で重篤であることが報告されています。このことも女性の高齢化からくる問題が考えられており、これらをふまえると女性の心臓・脳血管障害予防の管理は重要な課題と考えられています。それでは次に女性の動脈硬化危険因の主要なものをとりあげ、動脈硬化性疾患の関連を記載します。1)血清脂質:血清脂質の加齢に伴う変化は大きく、LOLコレステロールは50歳代以降はそれまでと違って女性の値が男性より高くなり、中性脂肪は男性の値が高いものの男女差は縮小します。(HDLコレステロールは全年齢層で女性が男性よりも高い)このような加齢、閉経に伴う血清脂肪、とくにLDLコレステロールの変化は女性の動脈硬化性疾患の発症リスクに大きく影響しています。そして多くの研究報告でLDLコレステロールの高い女性はそうでない女性と比べ冠動脈疾患発症のリスクが高いことを示しています。また女性においても中性脂肪の高値が虚血性心疾患(心筋梗塞を含む)発症の有意なリスクとなるとの報告もあります。つまり、LDLコレステロール、中性脂肪などの異常は日本人女性においても冠動脈疾患発症の重要な危険因なのです。2)喫煙:喫煙の冠動脈疾患のリスクに及ぼす影響は男性よりもむしろ女性が強いと報告されており、これは女性の喫煙者の心筋梗塞発症率が非喫煙者と比べ3〜8倍高く、また死亡リスクも喫煙女性では有意に高いとの報告などにより明らかとなっています。また喫煙は女性の脳梗塞発症の有意なリスクであり、受動喫煙は女性のくも膜下出血のリスクを高めます。3)高血圧:女性の高血圧は血圧上昇とともに冠動脈疾患発症リスクが高くなる傾向が認められています。また高血圧は女性の脳梗塞発症の有意なリスクであることが報告されています。つまり心血管死亡との関連も若い世代(30〜59歳)からみられ若い時期からの血圧の管理が重要と考えられています。4)糖尿病:冠動脈疾患、脳梗塞、死亡のリスクは非糖尿病者に比べ糖尿病の人では有意に高く、特にわが国を含む多くの研究で女性が男性より高いことが報告されています。
以上のことより動脈硬化性疾患の予防は女性において非常に重要ですが、その基本は他の生活習慣病予防と同じく、生活習慣の改善です。つまり非喫煙、運動量増加と、適性体重の維持、アルコールの適切な摂取、食生活の適性化などが非常に大切で、さらに最近ではこれらにテレビの視聴時間短縮の重要性が報告され、この6つの因子をすべておこなっている女性は、全くおこなっていない女性とくらべて冠動脈疾患の発症リスクが98%も低下することが示されています。
以上、女性の動脈硬化性心疾患に対しての最近の知見の概略を記載しました。

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