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心不全の機能による分類、進展ステージからの治療

心不全とは以前のWebでも記載したように、「心臓が悪いために、息切れやむくみがおこり、だんだん悪くなり生命を縮める病気」ということになります。心不全は心臓の左心室の収縮能の指標である左室駆出率(LVEF)によりLVEFの低下した心不全(HFrEF)、LVEFの保たれた心不全(HFpEF)、LVEFが軽度低下した心不全(HFmrEF)に大きく分類されます。以前は心不全といえばHFrEFと考えられていましたが、最近ではHFpEFが心不全にしめる割合が大きいことがわかっており、心不全の30〜50%をしめると報告されています。HFrEFの原因は虚血性心疾患、心筋症、心臓弁膜症などがあります。そしてその治療に有効とされる薬物治療は多くあります。一方HFpEFは高齢の女性に多く、高血圧や糖尿病、慢性腎臓病、心房細動、貧血、肥満などの全身性の合併症を多く有することが特徴であり、治療についてはHFrEFとは異なり、いまだに有効とされる薬物治療は確立されていなく、HFpEFの併存疾患の治療をおこなうにとどまっているのが現状です。そして心不全は現在増加の一途をたどっており、特に超高齢化社会を迎えているわが国においては効果的な対策をうちだすことが急務となっています。
そこで最近では心不全をステージ化し(ステージA〜D)そのステージの進行を抑制することが治療目標の一つとなっています。このことについて概略を説明します。ステージA:高血圧、高脂血症、糖尿病、ある種の薬物などの心不全発症のリスクを有するが器質的心疾患を伴わない人が分類されます。これらの人は生活習慣の是正や動脈硬化性疾患や糖尿病などに対する適切な治療をされることが強く推奨されています。
ステージB:心筋梗塞、心筋症、弁膜症などの器質的心疾患を有するが心不全症状を認めない人が分類されます。将来の心不全発症や左室形態の変化や機能低下の予防のために、有効なことが示されている薬物による治療が主としておこなわれていますが、虚血や弁膜症などに対する手術などをおこなうこともあります。
ステージC:器質的心疾患に伴う症状のある心不全の人が分類されます。治療の目標は症状およびQOLの改善と長期予後(生命予後・心不全入院)の改善となります。HFrEF、HFpEFの人に対する適切な薬物治療をおこない、しばしば体内に心臓の補助装置の設置を必要とすることがあります。ステージD:心不全に対する治療をおこなっても、安静時の心不全症状が改善しない、いわゆる心不全の終末期状態の人が分類されます。この人たちは症状およびQOLの改善、再入院の予防が目標となります。心臓移植を含めた治療も考慮されますが、治療のオプションが尽くされた場合は、終末期ケアの適応となります。このように心不全のステージを考え治療をおこなうようになりますが、ステージAからDへと一方向には進行しますが、決して早期のステージに戻ることはありません。ちなみにステージ別の5年間の生存率は、ステージA::97%、ステージB:96%、ステージC:75%、ステージD:20%と報告されています。したがってステージを意識した早期の治療が重要となるのです。そのために心不全のリスクとなる生活習慣病を有している人、あるいは器質的な心疾患を有している人は、早期よりの生活習慣の是正と伴に適切な治療を継続されることが非常に大切です。ご留意下さい。

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