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生活習慣病と骨折リスク

生活習慣病と骨粗しょう症は加齢とともに増加する疾患であり、両者は密接な関連性があることが明らかになっています。したがって両者を併発する人は今後増加すると考えられます。生活習慣病では骨粗しょう症による骨折リスクがあるとされているのは脂質異常症、高血圧症、肥満症などもありますが、2型糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、COPDでは骨折リスクが高いことがわかっています。これら生活習慣病では、骨密度(BMD)の低下よりも骨質の劣化が重要な病態として関与しています。(骨強度は骨量と骨質の総和と定義されています)また、生活習慣病には酸化ストレス、慢性炎症などが共通する要因としており、これらは骨代謝に負に影響し、骨質劣化を惹起して骨折リスクに関連すると考えられています。骨折リスクが高いとされる2型糖尿病、CKD、COPDについて概略を説明します。2型糖尿病には肥満者の人が多く、BMDが高いことより以前は骨粗しょう症にはなりにくいと考えられてきました。しかし最近ではBMDの低下がなくても骨折リスクは高く、それは主として骨質の劣化に起因することが明らかとなっています。たとえばBMDの観点からは腰椎、大腿骨ともやや増加しており(非糖尿病者とくらべ)、大腿骨近位部骨折リスクは低下すると予測されますが、実際は1.4倍に上昇することが報告されています。CKDにおいては、以前より透析患者さんは骨折リスクが高いことは知られていましたが、近年早期のCKDの人においても骨折リスクは上昇するとの報告があります。腎機能(椎定糸球体慮過量より評価)のやや低下したCKDの人は非CKDの人にくらべ大腿骨近位部骨折のリスクは2.1倍であったとの報告、CKDは椎体骨折のリスクとなるとの報告(閉経後女性を対象とした研究)などがあります。CKDでは低BMDと骨折リスクの関連性は報告が多くされていますが、骨質の劣化がやはり重要とされています。CKDではさらに筋肉量の低下や、サルコペニアがある人が多く、またビタミンD、マグネシウムの欠乏、栄養障害、薬剤の蓄積などさまざまな要因があり、それらが骨折のリスクに関与するとされています。
COPDが骨折のリスクであることは明らかになっています。COPDでは骨折リスクが1.5〜2倍に上昇すると考えれられており、すべての部位、特に胸椎骨折のリスク及び頻度が高いと報告されています。COPDの人はそうでない人にくらべBMDが低く、病期の進行と伴にさらに低下することが示されており、それに骨質の劣化が関連していると考えられます。またCOPDの人は喫煙者が多く、喫煙は骨折リスクとなることはよく知られています。さらにCOPDの人は低体重で、高齢な人が多く、活動性の低下、サルコペニア、ビタミンD欠乏などの栄養障害も関連すると考えられています。以上上記3疾患をとりあげて説明しましたが、要は生活習慣病を有する人は、骨折リスクが高いことを念頭に考えられる必要があります。事実上記3疾患を有する人は、骨粗しょう症の治療基準(詳細は略)を満たさなくても、骨粗しょう症の治療を考慮しようという試案が報告されています。したがって生活習慣病を有する人は、骨折の危険因子の管理、食事、行動などの生活習慣の改善、定期的な検査が推奨されます。

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