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糖尿病・血糖値のコントロール目標は?

糖尿病は高血糖に起因する代謝異常や血管障害などの諸種の併発症を発症・増悪させ、細菌感染に対する抵抗力の低下をもたらします。また膵臓癌や肝臓癌などの合併、認知機能障害、骨折のリスクの増大など多面的な障害をもたらします。したがって糖尿病の治療の目標はこれらの併発を防ぎ、健康な人と変わらないQOLを保ち、かつ寿命を全うすることにあります。
そのためには血糖のコントロールという基本的な治療方針が大事となります。食事療法、運動療法を行い(血糖値が高値でない場合)それでも良好な血糖のコントロールが得られない場合、経口血糖降下薬の服用などを開始し、血糖のコントロールを目指していただきます。この場合血糖のコントロールの目標はどう設定すべきかが問題となります。それについて今回説明します。糖尿病の併発症である糖尿病性腎症、網膜症などの細小血管症の発症を抑制するためには空腹時血糖値およびHbA1c(過去1、2ヵ月間の平均血糖値を反映する)の是正が必要となります。この観点からの目標は空腹時血糖値130mg/dl未満、HbA1c7.0%未満となります。一方心筋梗塞、脳梗塞などの大血管症は食後の血糖値だけが高い耐糖能異常(予備群)の段階から発症・進行するリスクが高く、その予防(抑制)のためには食後血糖値の是正が必要であり、食後の2時間血糖値180mg/dlがおおよその目標値となります。ただし上記の血糖のコントロールの急激な是正は、ときに重篤な低血糖・細小血管症の増悪、突然死などを起こしうるので、血糖のコントロールはその人の年齢、罹病期間、低血糖のリスクなどを考慮して適切にしていくことが肝要となります。その観点からは、食事療法や運動療法だけで血糖コントロールが達成可能な人は、血糖正常化を目指す際の目標であるHbA1c6.0%未満(空腹時血糖値110mg/dlに相当)を目安としてコントロールできれば、細小血管症、大血管症他の併発症発症を抑制できるとされています。(若い人、罹病期間の短い人に多く、低血糖のリスクがない)一方低血糖とその他の理由で治療の強化が難しい人は、HbA1c8.0%未満を最低限でも目標とすべきとされてます。HbA1cと細小血管症出現との関係には連続性が認められ、HbA1c8.0%を超えると網膜症のリスクや他の細小血管症の発症が多く認められ、心血管疾患などの大血管症のリスクも2〜6倍高まるとの報告があるからです。これらより理想的な血糖コントロールの目標は1日を通じて高血糖、低血糖がなく、空腹時及び食後高血糖が是正され、その結果HbA1c値が正常に近づくことといえます。糖尿病と診断され、その早期の血糖コントロールをされることが長期間の併発症発症や死亡に関連する事象を防ぐことが(遺産効果という)可能となるため、治療は遅滞なく行われることが重要なのです。特に糖尿病の未治療での放置や治療中断は生命予後を悪化させます。糖尿病の併発症予防のためには、血糖コントロールだけでなく、血圧、脂質のコントロール、肥満の解消、禁煙などを行なうことも重要です。今回は血糖値に焦点をあてて説明しました。われわれ医療機関を受信し、血糖値を測定した時には、御自分の糖尿病のコントロール状況の参考とし、上記血糖値に近づくようにされていただけたらと考えます。

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