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新型コロナウイルス感染症、発症しうる心血管疾患

年始のWebでの挨拶にも記したように、昨年〜今年にかけて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックがおこっています。御存知のようにCOVID-19はウイルス(SARS-COV-2)の感染によりおこり、1〜14日(平均5.8日)の潜伏期をへて、発熱、咳、咽頭痛、鼻汁、頭痛、倦怠感や嗅覚・味覚障害などの症状を生じます。(無症状な人もおりそれが問題の重要部分となりますが)肺炎を併発し重症化したり、重症化により血栓症をおこしやすくなり、それにより、肺梗塞、脳梗塞、心筋梗塞などの合併症を発症することもあります。また感染症の治ユ後に、倦怠感、呼吸困難感、関節痛、腹痛、味覚・嗅覚異常などの後遺症が比較的長期に残る人もあることがしめされています。臨床的な経過は感染者の5%の人が集中治療が必要となり、1〜3%の人が致死的な経過をとるとされています。そして80%の人が軽症のまま治ユすると当初はされていましたが、この中に当初の情報よりもはるかに多い無症状者が存在していることもわかってきました。この事が感染の拡大の重要な要因となっているのです。SARS-COV-2は無症状感染者においても鼻咽頭、鼻腔、唾液から放出されます。そしてウイルスの感染性は発症2.3日〜0.7日前に始まり、発症後7日以内に低下します。ウイルス量は症状が出てすぐに最大となります。つまり発症前から発症後間もない時期の感染性が非常に高いのです。そして感染した高齢者の人は極めて重症化しやすい一方で若年者の多くが軽症の経過をたどるのです。ゆえに感染を防ぐためには、健康だと思っている時期においても他の人に感染させる可能性のある行動をひかえましょうということになるのです。COVID-19の概略を記しました。次にCOVID-19に心血管疾患を有している人が罹患すると重症化しやすく、その一方でCOVID-19に罹患した人は特定の心血管疾患を発症しやすいことが示されており、そのさわりを説明します。@高血圧を有している人は有していない人と比べるとCOVID-19に罹患した場合死亡率が1.7〜3.1倍高くなるとの報告がされました。また致命的な合併症の発症率まで上昇するとの報告もあり、重症化するリスクが高いことは明らかになっています。降圧薬においては初期にはある種の降圧薬の服用がSARS-COV-2の感染リスクとなるとの論文が出ましたが、現在ではほぼ否定されており、その降圧薬の服用は推奨されています。A急性の心筋梗塞、急性心筋炎:急性心筋障害はCOVID-19に罹患した場合その発症率は7〜20%とされています。これは重度の炎症反応が心筋の細胞障害を惹起するために生じると考えられており、重症の心不全発症のリスクとなります。
急性心筋炎は他のウイルス感染によっても発症することはあります。COVID-19においても初期症状は胸痛、発熱、呼吸困難であることが多く、感染症状出現後長期間(10〜15日)経過した後に出現することが多くみられています。急性心筋炎は体内の免疫が関与している可能性が高く、発症すると急性心筋障害の重要な原因となりうります。
B狭心症、急性心筋梗塞などの急性冠症候群はCOVID-19の人に発症する事はあり、これもウイルス感染症に関連した全身の炎症反応、サイトカインストームなどを介して冠動脈のアテロームの不安定化をもたらす可能性が考えられています。C不整脈:SARS-COV-2の感染による心筋の炎症、自律神経(交感神経)活性の尢進などが原因となります。COVID-19の合併症の中で2番目に多く出現するとされており、約16.7%の人に認められ、心房細動、伝導障害、心室頻拍、心室細動が含まれています。D血栓症:COVID-19患者さんにおいて最も多い合併症とされており、原因はこのウイルスに特異的なものがあるいはサイトカインストームの結果によるものなのかなど考察はされていますが不明です。静脈血栓塞栓症、虚血性脳卒中、虚血性心疾患の発症が多く報告されており、入院患者さんの80%に認められ、死亡リスクも高いとされています。
その他、小児においては川崎病に類似した症状を量する子供が増加しているとの報告がいくつかみられます。
このようにCOVID-19は呼吸器だけでなく、諸臓器の障害をおこします。
今回はCOVID-19、そしてそれにより併発されるあるいは重症化しやすい心疾患の概略を記しました。いつ沈静あるいは終息するのかわからないCOVID-19に対して緊張感を持った生活が続きそうですね。気をつけて下さい。

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