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大動脈解離とは

大動脈解離とは大動脈壁が中膜のレベルで2層に剥離し、大動脈の走行に沿ってある長さ(剥離の長さには一定の定義はないがおよそ1cm以上あるものとの論文はある)をもち2腔になった状態で大動脈壁内に血流または血腫(血栓)が存在する病態です。つまり本来の大動脈内腔(真腔)と新たに生じた壁内腔(偽腔)からなります。この解離の発症メカニズムは不明な点が多いのですが、高血圧や遺伝性の結合織の病気(マルファン症候群など)による脆弱な中膜を背景にして高血圧や大動脈基部の運動などの血行力学的負荷が加わって発症すると考えられています。大動脈解離は解離の範囲からみた分類ではA型(上行大動脈に解離があるもの)、B型(上行大動脈に解離がないもの)と分類するスタンフォード分類がよくもちいられ、また偽腔の血流状態からみた分類として、偽腔閉塞型、偽腔開存型(ULP型←知られなくてよい)がもちいられます。ちなみに病気からみると、発症後2週間以内を急性期、2週〜3ヶ月までを亜急性期、3ヶ月を超えると慢性期とし、治療を考える上で我々医療者にとっては重要となります。大動脈解離の発症は年間10万人あたり10人と最近では報告されており、発症年齢のピークは男性、女性とも70歳代です。(動脈硬化との関連と考えられている。)。解離の発症は冬に多く夏には少ない傾向があり、時間的には日中、特に午前6〜12時に多く(いわゆる活動時間にあたる)深夜から早朝は少ないと報告されています。発症の曜日による差はありません。大動脈解離は発症後短時間でなくなる人が多く、これは24時間以内に約93%の人が死亡されたとの報告(病院到着前死亡61%)など非常に生命予後の悪い病態です。死亡の最大の原因は上行大動脈の解離が心のう内で破裂し、心タンポナーデという状態を生じることによります。解離によって生じる状態としてはA型解離では前胸部痛、B型解離では背部痛や腹痛が特徴で大半の人は過去に経験したことがない鋭く引き裂かれるような痛みが突然発症したと表現されます。一方で約6%の人は無痛性であるとの報告もあります。また9〜20%の人は典型的な疼痛はなく失神をきたします。(心タンポナーデや脳の虚血によることが多い)また解離により大動脈の分岐に狭窄閉塞が発生した場合には、その分岐から血液の供給を受けている臓器の血流障害(灌流障害)が生じ、種々の重篤な障害を生じます。すなわち心筋梗塞、不整脈、胸腔内血液貯留による呼吸障害、脳梗塞、脊髄虚血による四肢の対麻痺、腹腔動脈、上胸間膜動脈の狭搾・閉塞による腸管虚血・壊死、腎動脈閉塞による腎不全、四肢の虚血などです。解離診断は患者さんの状態から多少の時間的余裕があるときはCT検査が有用です。
大動脈瘤の存在や破裂の確定診断ができるだけでなく、血栓の広がりや周囲臓器の状態が明らかにできるからです。また解離の進行範囲や偽腔の血流状態の把握には必須となります。その他エコー検査、MRIによる検査も施行されます。
治療はA型解離の場合自然予後はきわめて不良なため、緊急手術の適応となります。B型解離では合併症がなければ内科治療の適応となり、上記にあげた合併症があれば血管内治療などの侵襲的治療をおこなうことになります。長くなるので一応要点と思われる所を記し概略としました。大動脈解離は非常に恐い病気です。日頃より特に生活習慣病をお持ちの人は自身の病気をしっかりと良好な状態にコントロールされて下さい。

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