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腎疾患と血圧

高血圧と腎臓は密接に関連し、高血圧の成因に腎臓は重要な役割を果たします。一方高血圧は腎障害を引き起こして慢性腎臓病(CKD)の原因となります。CKDは尿所見の異常、血液所見、画像などにより診断・定義されます。そしていったんCKDが発症すると高血圧は重症化するという悪循環が形成されます。またCKDでは夜間の血圧の低下が消失するなどの血圧の日内変動の異常がみられ、脳心血管病発症のリスクとなります。さらにCKDには睡眠時無呼吸症候群(OSAS)が高率に合併し、高血圧の重症化の原因になることも指摘されています。したがってCKD合併高血圧の人ではCKDの原疾患の治療とともに24時間にわたる血圧の厳格な管理が重要となるのです。腎機能は30歳代から加齢とともに低下しますが、いわゆる健常者においてはその低下度はきわめて小さいとされています。しかし高血圧や糖尿病の人はそのコントール状況により大きな低下をおこすことは知られており、CKDの発症に強く関与します。また末期の腎機能不全(ESKD)である透析患者さんの発症においても高血圧による腎硬化症が強く寄与しています。そしていったん腎機能不全におちいると、透析療法へ移行される前に心筋梗塞、脳卒中などの脳心血管病を高率に発症されることが明らかとなっているのです。したがってCKDの人の血圧の管理は非常に重要です。この血圧の管理においてはCKDでない人と同様生活習慣の修正が必要です。すなわち食塩の制限、適正体重の維持、禁煙、蛋白質摂取量の適正化が基本となります。食塩の制限は血圧の管理に重要であることは明確ですが腎障害の進展を抑制するのにも重要となります。段階的に摂取制限をおこない、6g/日未満にすることが推奨されています。肥満はCKDやESKDの発症に関与するとされており、またCKDでは腹部肥満と全死亡や脳心血管病の発症が有意に関連すると報告されています。メタボリックシンドロームはCKDの発症のリスクでありまたCKD患者さんの生命予後に相関することも示されています。
喫煙は腎機能低下に悪影響を及ぼすことが糖尿病の人において報告されており、一般の人においても脳心血管病のリスクであることは確立しており、禁煙は基本です。蛋白質の過剰な摂取は腎臓の機能の予後に影響します。そして蛋白質の摂取の制限によりCKDの進行、ESKDの発症のリスクが減少することが示されてきました。しかし厳格な蛋白質の摂取制限は、特に高齢者においてはサルコペニア、フレイルなどが増悪する割合があり、また尿中に蛋白がでない人の場合、腎機能の低下速度は遅く、蛋白質制限を行う意義は乏しいとされています。したがって画一的な蛋白質摂取制限を行うのではなく、個々の患者さんの病態などを総合的に判断し実施することが望ましいとされています。逆に運動療法は、CKD患者さん(透析中の人も含む)においても血圧を低下させ、心臓・肺の機能を高め、生活の質(QOL)の向上をもたらします。上記の生活習慣の修正を行い、なお血圧の高い人には降圧薬の服用による治療が必要となります。ここでCKDを合併している高血圧の人の血圧管理は何が目標なのかを再認識していただく必要があります。すなわち脳心管病の発症抑制、CKDの進展、ESKDの進展阻止ということです。そのためには我々医師が降圧値の目標や個々の患者さんへの最適な降圧薬を説明し、それをふまえて上記目標のためすなわち御自身のために自覚を持たれて服薬していただくことが重要です。ここでの降圧値の目標は診療時に説明します。(合併疾患によって違う、特に透析をされている人では)
以上 腎臓病と血圧を概説しました。

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