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くも膜下出血とは

頭蓋骨の内側には脳を保護する3層の膜があります。外側から硬膜、くも膜、軟膜となっており、そのくも膜と軟膜の間がくも膜下腔であり、その間に出血が生じた病態をくも膜下出血(SAH)といいます。SAHの発生頻度はわが国においては約20人/年とされており、女性に多い傾向を認めます(男女比1:2)。脳血管障害に占めるくも膜下出血の割合は増加しており、今後もその動向に注意していく必要があるとされています。SAHの原因疾患としては脳動脈瘤(特発性SAHの85%)が多く、その他脳動静脈奇形、脳動脈解離などが指摘されています。一親等以内の脳動脈瘤保有者の家族歴がSAHのリスクであり、SAHの4%に脳動脈瘤を有するとの報告があります。また前記の如く女性は独立したリスクとなり、人種(日本、フィンランド)もリスクと指摘されています。SAHをきたす修正可能なriskとなる生活習慣病では喫煙習慣、高血圧、1週間に150g以上の飲酒があげられています。それぞれの相対危険率は1.9倍、2.8倍、4.7倍であり、高度な飲酒は最も危険な因子となります。逆にコレステロール値、心疾患、糖尿病とは関連しないと報告されています。肥満度はSAHの発症と逆相関しており、それとくらべやせた高血圧の人、やせた喫煙者ではSAHの危険が増大したと報告されています。季節や気候によるSAHの発症に関しては、夏より冬に多いという季節性はありますが、温度、湿度、気圧をふまえた気候との関連は示されていません。SAHの症状としては雷鳴頭痛(頭が割れるような激しい頭痛)、嘔気・嘔吐、意識消失あるいは心肺停止より死亡などが認められます。SAHは再出血が多く発生し、発症24時間以内特に発症早期(6時間以内)に多いとされています。再出血により当然重症度が増加します。したがってSAHが発症した時は初期の治療、再出血の予防、全身状態の改善は重要ですが、その発症を防ぐことが当然のことながら重要です。そのためにはSAHの最大の原因である動脈瘤が未破裂の状態で発見された場合に治療の検討をその人の年齢、健康状態などの背景や、動脈瘤の大きさや部位、形状などの病変の特徴、動脈瘤の経時的な変化などより行うことが大切です。ちなみに未破裂動脈瘤の破裂リスクからは下記のようなものはリスクは高く、治療などを含めた慎重な検討が勧められています。@大きさ5〜7mm以上の未破裂動脈瘤 A5mm未満の場合A)複視や急激な頭痛の悪化など動脈瘤に起因する症状を来たすもの B)脳内のある種(名称は略)の動脈に存在する動脈瘤 C)動脈瘤の形状が不規則、不整形などを呈するもの。これらのSAH、未破裂動脈瘤の診断にはCT(A←血管造影)が施行されることが多く、脳血管造影と診断率は同等以上とされています。MR(A)も施行されます。(CTAより診断能は劣るとされている)未破裂動脈瘤に対する観血的な治療を行わず経過観察する場合は、喫煙・大量の飲酒を避け高血圧の治療をすることが大切で、可能であれば半年か1年毎の画像による経過観察が考慮されます。SAHを発症した場合に行う観血的な治療には開頭手術(開頭し破裂動脈瘤の根元をクリップでとめ血液の露出を止める)、血管内治療(体内にカテーテルを入れ、その中に挿入したコイルを動脈瘤の内側につめる)があります。
全身状態の管理、観血的な加療をするにしろ、SAHは予後は良好でないことが多く、発症者の約43%(全体での死亡率は約10〜67%)は要介護以上の転帰不良となられます。
したがってSAHの予防のためには修正可能なリスクを有している人は、その是正をはかることが大切です。
SAHに対する概略を記しました。御留意下さい。

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