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微少血管狭心症とは

太い冠動脈に強い動脈硬化性病変がなければ、太い冠動脈はすべての冠動脈の血管抵抗の約5%しか関与されていないとされています。このことは微少な血管が心筋の血流調節の中心的な役割を果たしていることを意味しており、その調節機構の破綻は太い冠動脈の狭窄やれん縮(過収縮)の有無にかかわらず、心筋の虚血をまねきうります。
今回は上記により発症する微小血管狭心症について説明します。労作時あるいは安静時の狭心症様症状を訴え、冠動脈造影を施行された人のなかに、心外膜を走行する冠動脈に血流を障害する高度狭窄病変や冠動脈のれん縮のいずれも認められないことが少なからず存在することがあり、このような病態を微少血管狭心症といいます。その臨床的な特徴は以下のようです。 ○女性とくに閉経後の女性に多い ○胸痛の症状や心電図所見によって一般的な狭心症と区別することはできない ○労作時以外に安静時にも胸痛を生じることが多い。 ○胸痛の持続時間が10分以上のことがまれではない。 ○狭心症発作に有効な舌下錠の有効率は50%以下である。 ○生命予後は良好であるが、狭心症症状の増悪やそのための再入院がまれではない などです。わが国においては欧米とくらべると労作時より安静時狭心症の人が多く、冠動脈の微少血管のれん縮が狭心症の発生に関与している可能性が指摘されています。この冠動脈微少血管れん縮による狭心症は1998年にわが国から報告されており、その後の他国からの報告を合わせ考察すると微少血管狭心症の臨床的な特徴に類似しています。微少血管狭心症の治療は薬物療法となります。この場合比較的治療効果のある薬は報告されていますが、いずれも少数の患者さんでの検討であり、有効性を確率するほどの十分な証拠はないとされています。したがって治療法は確立されていないため患者さんのQOLは低下することとなり社会医療経済学的にも問題となるのです。
以上、微少血管狭心症状について現在までの知見をまじえ説明しました。

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