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誤嚥性肺炎およびその発症予防

誤嚥性肺炎は口腔、咽頭、胃の内容物を気道内に誤嚥することによって生じる肺炎で、70歳以上の高齢者肺炎ではそのほとんどが(約80%以上)誤嚥性肺炎と診断されています。
誤嚥の主たる原因は摂食嚥下障害と考えられており、ある種(サブスタンスP
という)の神経伝達物質の低下が重要な原因の一つとされています。認知症、身体活動機能の低下、男性、喫煙歴、経口摂取能力の低下、併存する疾患(食道・胃切除術後、骨粗しょう症による円背など)などが発症に関連する要因です。誤嚥性肺炎は生命予後は良好でないことは多く、そのため発症予防対策は重要となります。それには薬物の服用、科学的な根拠のある物の摂取、摂取嚥下障害に対するリハビリ訓練などがあり、今日はそのことについて記載します。(薬物の服用は略)
1.口腔ケア:口腔ケアは食物残査や口腔内細菌を除去するたけでなく、ブラッシングが嚥下反対・咳反射の感受性の改善を促します。それにより肺炎発症および死亡率を抑制することは知られています。2.TRPチャネル(温度だけでなく多くの化学的・物理的刺激を感受するセンサーと考えられている)の刺激@食事の温度:60℃以上の熱い温度あるいは17℃以下の冷たい温度に反応するTRPチャネルの刺激により嚥下反射は劇的に改善します。すなわち熱くして食べるものは熱く、冷たくして食べる物は冷たくということが重要となります。A香辛料:唐辛子の辛味成分であるカプサイシンやミントの主成分であるメンソールはTRPチャネルを刺激して咽頭における嚥下反射や嚥下運動を改善します。3.黒コショウ椒外皮より抽出したブラックペッパーアロマを毎食前に1分間嗅いでもらうことを1ヶ月続けることで嚥下反射および嚥下運動回数が改善するとの報告があります。
これは誤嚥性肺炎を繰り返し発症する人は大脳の島皮質という部位の活性が低下していることが多く、その活性を改善するためと報告しています。4.食後の坐位の保持:これをすることにより肺炎の発熱日数の有意の差があったと報告されています。食後の体位はなるべく30°以上、2時間のギャッジアップがよいとされています。5.便通コントロール:これをおこなうことにより肺炎発症を抑制できるとされています。6.栄養:肺炎を発症する人は、発症しない人とくらべ低タンパク血症などの栄養状態の低下している人に多いことが知られています。したがって点滴などを含めカロリーを補給され栄養状態が改善すると共に肺炎発症が予防されるとの報告もあります。7.体位訓練:頭部屈曲これはいわゆる顎を引く姿勢で誤嚥に対して効果があります。頚部屈曲 下を向く姿勢になることで嚥下反射の誘発が低下している人に効果的です。複合屈曲(頭部屈曲+頸部屈曲)をすることも効果的となります。顎部の回旋(まわす)は回旋した側の咽頭が狭くなり食物塊が通りにくくなります。したがって脳梗塞をおこされた人で咽頭の片側が麻痺している場合には、麻痺側に回旋されることで食物塊は通りにくくなり、麻痺していないほうへ食物塊が誘導され、誤嚥の予防になります。8.嚥下パターン訓練:息を止め、嚥下をしてすぐに咳払いをすることです。息を止めることで声門がとじるため誤嚥を防ぐことになり、嚥下後に咳をすることで気道に侵入した食物塊を除去できます。9.頭部挙上訓練:食道人口部の開きを大きくし、嚥下するための筋肉の強化を目的としておこなわれます。仰臥位(あおむけ)で頭部を1分間持ち上げる動作を1分間の休憩をはさんで3回おこない、その後頭部を持ちあげる動作を30回おこないます。これを1セットとして1日3セット、6週間おこなうというものです。
以上、誤嚥予防のための重要なものを記載しました。高齢の人だけではなく、その介護(特に誤嚥性肺炎された人の介護)をされておられる人の参考になればと思います。

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