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心筋炎

心筋炎は心筋に炎症をきたす疾患です。心筋の細胞の破壊により体内の免疫反応がおこり重大な炎症反応を生じますが、臨床像は無症状から心原性ショックに至る人まで多彩であり、心不全、不整脈、突然死をきたすこともあります。心筋炎の多くは、ウイルス感染によるものと考えられていますが、細菌や寄生虫あるいは非感染性の原因として毒物や薬物によって発症する場合もあります。心筋炎の年間発症率は10万人に22人(0.02%)と想定されており、男性に多く発症し(女性の約1.5倍)新生児を含む小児期と20〜40歳前後に有病率が多いことが認められています。(いわゆる二峰性)そして若年者の心臓突然死の原因の中では、心筋が肥大する肥大型心筋症、冠動脈疾患について頻度が高く、若年者の突然死の4〜12%を示めるとされています。
心筋炎の自覚症状は感冒様症状や嘔吐、下痢などの消化器症状が先行し、その後数時間から数日の経過でけんたい感、呼吸困難などの心不全による症状が出現します。ただし先行する症状を認めない場合はあります。そのほか心臓をおおう心膜の刺激による胸痛や不整脈による動悸、失神などがみられることもあります。これらの多彩な症状は発症時期が明確でないことも多く、症状の有無にかかわらずほとんどの人は心不全などの一般的な治療に反応し、1〜2週間以降に自然に招快します。
他覚的な症状では発熱、脈の異常(速い、遅い、不整である)、低血圧、脈圧の減少、(心不全の微候として)、下腿浮膜、四肢の冷感などを呈します。
検査は血液検査、胸部X線、心電図、心エコー、心臓MRI、心臓カテーテル検査などがおこなわれますが、確定診断はカテーテル検査により、心筋の筋肉の採取をおこない、病理組織学的になされます。治療経過は上記に記載したように、多くの場合は自然に軽快・治ユします。しかし心筋の炎症が数ヶ月以上持続し慢性化する慢性心筋炎の病態を呈することもあります。心不全や不整脈をきたし、拡張型心筋症といわれる心臓の機能が低下するものです。また急性心筋炎の一部には発症初期に短時間で劇的に症状が悪化し、重度の心機能の低下、心臓が原因のショック、致死的な不整脈などにより重度な病態をきたすことがあり、劇症型心筋炎とされています。この場合機械的な補助が救命には必要となり、その使用などにより症状の悪化した急性期をのりきることが劇症型を生じた人の生存に必要となります。この場合急性期を生存できれば、その人の長期予後は必ずしも悪くはありません。稀ではありますが治療に反応しないある種の心筋炎もあり、死亡あるいは心臓移植を必要とする頻度が非常に高い(約5年間で90%)生命予後の不良な心筋炎があります。
心筋炎を発症されると4.5年間で約10%の人が再発することが知られています。また上記に記載したように心臓の機能の回復が得られない人や、慢性期に心臓の機能の低下をきたし慢性心不全に移行する人も存在します。したがって、心筋炎を発生された場合、長期間の経過観察が望ましいとされています。
以上、心筋炎について説明しました。

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