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一過性の血圧の上昇 誘発する病態 治療は必要か?

進行性あるいは慢性の臓器障害がなく一過性の血圧上昇が出現することはよく知られています。たとえば怒りや不安などの精神的要因はその原因となります。また一過性に高度の血圧上昇を示す人には次のようなことが多く認められます。@血圧を感知あるいは受容する機構の障害A不安に伴う過換気Bパニック発作(パニック障害)C偽性褐色細胞腫D褐色細胞腫
@は高齢な人や自律神経の障害を有する人などによく認められ、血圧変動が大きく180/110mmHg以上の高血圧を呈することがあります。Aは呼吸の回数が増加し、主として指の感覚異常、めまい、動機、頭痛などの症状を呈します。過換気により血液がアルカリ性側に傾き血管が収縮することにより血圧が上昇します。過換気には不安障害やパニック障害を伴っていることも多く、その場合血圧が低くなることを難しくしている一因と考えられています。過換気発作の予防には認知行動療法などの精神的なアプローチが有用と考えられますが、これが一過性の血圧上昇を予防するという証明はされていません。Bは精神的な要因が大きく関与しており、発作時には強い不安、恐怖感がありくり返し発症することが特徴です。また高血圧と相互に関連し、心筋梗塞や脳卒中などの脳心血管病のリスクとなることも報告されています。Bに対しては抗不安薬などの服用が発作の予防に有効となります。そしてそれにより発作に伴う一過性の血圧上昇の抑制も期待でき、実際に有効との報告はあります。Cは次に記載するDと似た症状、すなわち頭痛、胸痛、めまい、悪心、動悸、潮紅、発汗などの身体症状と血圧上昇を呈しますが、画像による診断ではDで存在する腫瘍性の病変はなく、またBで認められる血圧を上昇させるホルモンの上昇も軽度にとどまります。病態としては精神的な要因の関与が示唆されていますが、それが明らかでないことも多く認められます。血圧上昇の機序は臓器よりの血圧を上昇させるホルモンの分泌の亢進と、それに対する心血管系の反応の亢進の関与が考えられています。
この場合、ある種の降圧薬の服用が有効ですが、前記した精神的な要因の関与が大きい人にはその服用に抗不安剤や抗うつ薬の服用が発作性の血圧の上昇の予防に有効との報告があります。したがってこのような人は心療内科の医師の受診なども必要となります。Dは血圧を上昇させるホルモンを産生する腫瘍が臓器や傍の神経節に存在するものです。(現在では本腫瘍は全て悪性の可能性があると考えられています。)症状はCに記した症状を呈しますが、高血圧の発作は運動、ストレス、排便などで誘発されます。
診断は血液・尿検査や種々の画像検査を用います。治療は原則腫瘍の摘出です。@〜Dに記してきた病態に関してはDを除き臓器障害がない場合、緊急な降圧の対象とはなりません。またこれら一過性の血圧上昇に対して降圧を考慮する血圧の基準はありません。しかし30分以上の安静にもかかわらず収縮期血圧が高血圧切迫症の基準と考えられる180mmHgを超える場合には降圧薬の服用も考慮されます。ただしその場合も、血圧をただちに正常化する必要はなく、160/100mmHg程度を目指すとされています。一方で不安などの精神的な要因を取りのぞいて安静にしていることで血圧が徐々に降下することも多くあり、降圧薬の服用をすることなく経過をみることの重要性を示した報告もいくつか認められます。以上、一過性の血圧上昇を概説しました。
さらにつけ加えると、よくみなさんも受診される歯科での治療においても一過性の血圧の上昇はおこります。これは脳卒中などの発症リスクがあるため、血圧が180/110mmHg以上であれば緊急処置以外は内科受診が推奨されます。何よりも御自分の高血圧の有無と事前の血圧の管理が重要です。

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