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喫煙  動脈硬化性心疾患発症のリスクとして

喫煙は悪性腫瘍や慢性肺疾患の重大な危険因子であることはご存知だと思います。たとえば悪性腫瘍(癌)では喫煙と確実な関連があるものでは、口腔、鼻咽頭、副鼻腔、肺、食道、胃、膵臓、大腸、腎臓、尿管、膀胱、子宮頚部、卵巣、白血病の癌があげられています。
一方喫煙が心血管病の重要な危険因子であることの認知度はやや低いように感じられます。喫煙は動脈硬化の進行を基盤とした虚血性心疾患(心筋梗塞など)はもとより脳梗塞、頸動脈狭窄、大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症、毛細血管障害などの原因にもなります。また喫煙は高血圧や糖尿病の発症、腎障害などとも関連あるとさえており、それらを介して心血管疾患の危険性をさらに助長します。2017年の国民健康・栄養調査によると習慣的に喫煙している人の割合は男性で29%、女性で7%あり、日本人の喫煙率はここ数十年間で徐々に低下はしているものの、ややさげ止まりの傾向が見られます。さらに先進国の中では依然として男性の喫煙率は高値を示しています。死因に目を移してみると喫煙と関連する割合は男性で約28%、女性で7%と推定されています。それでは喫煙がどのようにして動脈硬化病変を引きおこすかについて説明します。この最も重要な原因の一つは、喫煙による体内における慢性的なな炎症反応の惹起と考えられています。喫煙者は非喫煙者にくらべて血液検査で白血球数やある種の炎症反応性タンパク値が高く、これは体内の炎症状態の亢進を反映していると考えられます。動脈硬化の成因の重要なステップは血管壁の炎症に伴い血液中で血球の成分、脂肪などの反応により動脈硬化病変が形成されることで、これはまさに炎症反応であり、喫煙はこの炎症を活性化していることになるのです。喫煙はまた血液の凝固に重要な働きをするフィブリノーゲンという血液成分の増加にも関連しており、この増加は脳心血管病をはじめとする動脈硬化(また血栓による病気)を促進します。
さらに喫煙は血管壁の内側の血管内皮細胞を障害します。血管内皮細胞からは一酸化窒素(NO)などの血管を弛緩(拡張)させるものが分泌されています。したがって喫煙によりNOなどの分泌が少なくなると血管は弛緩とは逆に収縮するということになるのです。これはまさに血流の阻害になり、上記に示した脳心血管病変発症の原因となります。喫煙の急性効果から考えると、喫煙によりニコチンを介して自律神経(交感神経)を刺激し、血圧および心拍数を上昇させます。これらは血管収縮反応を引き起こし、冠攣縮(けいれん様収縮)性狭心症をおこしたり、冠動脈プラーク(動脈硬化巣)の破裂を誘導したりして、直接的な急性冠症候群の引き金になります。
また近年明らかになってきた重要なことは喫煙に伴う心筋梗塞発症のリスクは、全く喫煙していない人や全くタバコの煙の曝露のない人に比べて、1日1本のみの喫煙や受動喫煙のみでも数倍にはねあがることです。これらのことをまとめるとがんとことなり虚血性心疾患(脳血管疾患)が強く喫煙の影響を大きくかつ直接的に受けているということになります。心筋梗塞などの予防には減煙ではなく禁煙が重要なのです。喫煙されている人、自身およびまわりの人の健康のために禁煙にむけて頑張ってください。(タバコ代はどんどん値上がっていきますしね!)

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