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糖尿病  歯周病との関連は

歯周病は歯垢(プラーク)に付着した細菌を原因とする炎症性の疾患で、発症が歯肉に限局する歯肉炎と歯槽骨の破壊によって支持組織の喪失を伴う歯周炎に大別されます。歯周病は日本人では30〜55歳未満の人では40%以上、50歳以上の人では半数以上に認められ、患者の割合は年齢とともに増加しています。歯周炎においてはそのほとんどが慢性歯周炎と診断され、口腔清掃状態の不良な35歳以降の成人で多く発症しますが、喫煙と糖尿病はその進行のリスクとなります。今回は糖尿病と歯周病との関係について説明します。糖尿病の人の歯周病発症・悪化の原因には血糖高値による脱水傾向のため口腔が乾燥し、唾液による自浄作用が低下することや血糖高値による歯周病の原因細菌に対する抵抗力が低下することなどがあげられています。
1型糖尿病、2型糖尿病の人も糖尿病でない人とくらべ歯周病の発症率が高いことは示されています。欧米において報告されているとの同様、我が国においてもHbA1c(過去1〜2ヶ月前の血糖値を反映し、5.6%未満を正常とする)が6.5%以上の2型糖尿病の人は糖尿病でない人より歯周病発症の相対リスクは約1.2倍高まると報告されています。糖尿病を治療することで歯周病が治療するかに関しては、治療により歯周組織の炎症はある程度改善するものの、治ユにいたることは残念ながらありません。後述するように、歯周治療が不可欠なのです。一方歯周病から糖尿病との関連をみてみると、アメリカの国民栄養調査では2型糖尿病の発症率は重度歯周炎の人は非歯周炎の人と比べて2.1倍と示されており、アイルランドでも1.69倍になることが示されています。我が国においても歯周病によって糖尿病領域になる人の割合が高いことは同様とされています。これらのことをふまえ、2013年に軽度から中等度の歯周炎は糖尿病の進行リスクを上昇させ、重度歯周炎は血糖コントロールを悪化させるとアメリカから声明がだされ、さらに2018年にはヨーロッパよりHbA1cおよび空腹時血糖、経口ブドウ糖負荷試験による血糖コントロールの悪化には歯周病罹患の有無と明白に関連があるとの論評が出されています。さらに重度歯周炎を有する糖尿病の人は糖尿病腎症の発症率や虚血性心疾患による死亡率が上昇することも示されています。歯周病治療による効果をみてみると、1型糖尿病の人では歯周治療により血糖改善効果を示す報告はあるものの、有意な改善を認めないとする報告も多く、一定の見解は得られていません。一方2型糖尿病の人では歯周治療により血糖の改善効果が多くの研究で示されています。代表的な解析では歯周治療によりHbA1cが0.65%、空腹時血糖が9.04mg/dl低下と算出しており、多くの研究を平均するとHbA1cが0.29〜0.66%低下することが示されています。したがって我が国においても糖尿病の人の歯周治療は強く推奨されています。歯周治療は前述のように糖尿病の治療では治ユしません。歯科医師や歯科衛生士によるプラークや歯石の除去によりにより歯周組織の炎症をコントロールすることです。また再発予防のために3〜6ヶ月間隔の定期管理を行い、禁煙などもおこなうことが大切です。
歯の衛生は大切です。周知して下さい。

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