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不整脈と運動療法(リハビリテーション)

運動療法は高血圧、虚血性心臓疾患、心不全、肥満などの人への有用性(健康に対する)は十分な医学的証明がされていますが、不整脈に対する有用性は色々報告はあるもののまだ十分とはいえません。一般的に運動によって不整脈は減少する場合と、誘発され悪化する場合があります。(機序は略)運動中に出現する不整脈の中で最も多いのは心室性期収縮であり上室性不整脈がそれに続きます。運動負荷試験における不整脈の出現についての報告では、発作性上室頻拍は平均1.1%、発作性心療細動は平均0.3%に生じるとされ、2発連以上の心室性期外収縮の出現は心疾患のない人で6%以下、心疾患を有する人では15〜31%に生じると報告しています。アメリカ心臓病学会は心臓血管疾患の人の健康を維持するための7つの修正すべき要因(LS7)をあげています。LS7は3つの健康要因(コレステロール値、血圧、血糖)と4つの生活習慣要因<喫煙、活動、食事、BMI(肥満指数)>についての状況を採点し合計するものです。
LS7は心血管疾患の発症や心不全の予防についての効果は示されていましたが、最近心房細動(AF)の発症予防においてもその有用性が示されています。LS7のうち高血圧はAF発症のリスクの20%と関連し糖尿病はAF発症リスクの2.5%と関連します。肥満は18%の人が最適な体重にすることでAFが予防可能です。喫煙はAF発症リスクの10%未満と関連し、運動はAF発症リスクの9%減少につながると報告されています。AFは最もよくみられる不整脈であり、脳梗塞の原因になるばかりではなく、認知症、運動機能低下、心不全、心筋梗塞、心臓突然死のリスクを増加させます。
そこでAFと運動の関連について考えてみます。運動とAF発症リスクの関連は複雑であり、一般性民と高い運動能力を持つアスリートではその関係性が異なることはよく知られています。たとえば週3回、10年以上の持久系の運動をしているアスリートはAF発症のリスクは高いとされており、同様にいろいろな競技種目(自転車、マラソン、サッカー、水泳など)でもリスクは高いとの報告があります。原因は特定できてはいませんが、AFの発症起点となる心房の拡張、繊維化、自律神経(副交感神経)の亢進などが考えられています。一方65歳以上の人を対象とした日頃の運動習慣とAFの発症に関する報告では、身体活動レベルの高い人などAF発症リスクが有意に低下したと報告しており、運動の強度については中等度の運動ではAF発症リスクを有意に低下させるが、低強度と高強度の運動では発症リスクは低下させなかったとしています。仕事に関連した運動量とAF発症との関連では座位を中心とした仕事ではAF発症は増加せず、運動量との関連は認めなかったとの報告もあります。運動能力とAF発症のリスクの関連についての報告では、運動能力(耐容能)の高い人ほどAF発症のリスクは低かったとしています。他の報告でも運動耐容能の向上はAF発症リスクの9%の減少につながり、最も運動耐容能の低い人で高いAF発症リスクを認めたとしています。このように運動がAF発症予防に有効という研究は多くあります。一方持続性のAFの人の運動療法の報告では、中等度から高度の強度の運動を一定時間、周期的におこなうことで有意に運動耐容能が上昇し、安静時や運動時の心拍数が抑制され、さらには心拍数の変動が改善される効力が期待できるとの報告が種々あります。心不全でAFのある人の運動療法をおこなった報告では、心不全のない人とくらべ運動療法のための入院、死亡率などの差異は認めなかったと報告されています。このようにAFの人に対しての運動療法の有用性に対しての医学的な証明は蓄積されてきています。最後に心室性期外収縮などの心室性の不整脈に対しての運動療法をみてみると、運動療法により改善する可能性が示唆されています。自律神経の関与の改善、心臓の機能の改善、精神的なストレスの改善などが考えられています。以上、不整脈とリハビリテーション(運動療法)の有用性について概説しました。

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