お知らせ

心不全に対する心臓リハビリテーション

心不全とは心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める疾患であることは以前にも記しました。そのためそれに伴って、運動できる能力の限界(運動耐容能)も低下します。したがって心不全に対する治療はその重症度を規定する運動耐容能に対するアプローチが重要となります。運動耐容能の改善には運動療法を中心とした心臓リハビリテーションが必要となります。運動療法による心臓リハビリテーションは、労作時呼吸困難や疲労感などの心不全症状や狭心症発作、日常生活における同一労作による諸症状を軽減してQOL(生活の質)を改善します。すなわち運動耐容能を改善させるのです、これは年齢、性別にかかわらず認められ、運動療法開始時の運動耐容能が低いほど改善効果は大きいとされています。また運動療法により筋肉量の増加、自律神経機能の改善など多面的効果も認められます。心不全に対する心臓リハビリテーションの目的は長期的な生命の予後の改善と心不全にする入院の回避であり、このことはリハビリテーションによる効果として心血管死亡、心血管入院の減少などとして現在までに多くの報告があり、その効果はほぼ確立されています。そのため心不全患者さんは医療機関内でのリハビリ以外に自宅での心臓リハビリテーションが重要となるのです。心臓リハビリテーションの心不全の人に対する運動療法としては、種類として歩行、自転車(サイクルエルゴメーター)、軽いエアロビクス体操などがあります。運動の強度はリハビリ開始初期は屋内歩行50〜80m/分を5〜10分間あるいはサイクルエルゴメーター10〜20Wを5〜10分間おこない、自覚症状などを目安に1ヶ月程度かけて時間と運動の強度を漸増します。そして症状や身体の状態が安定していれば、運動の強度を楽である〜ややきついレベル(ボルクスコアという自覚的運動強度で11〜13のレベル)で1回5〜10分/1日に2回程度から1日30〜60分まで徐々に増加し、このリハビリを週3〜5回程度まで増加することが到達目標となります。この心不全に対する心臓リハビリテーションにおいて現在ではレジスタンストレーニング(筋力トレーニング)を併用することが有効であると考えられています。特に筋力水準の低い高齢の人、サルコペニア、フレイルを有する人には有効性が高いとされています。レジスタンストレーニングにはウエイトマシン、ゴムバンドや自分の体重を利用した運動が推奨されており、運動強度はボルクスコアで11〜13(ややきつい)の範囲内で週2〜3回併用することが推奨されています。
このように有酸素運動(上記の歩行など)とレジスタンストレーニングを組み合わせて心不全に対する心臓リハビリテーションを進めることが必要とされています。もちろんリハビリテーション中(特に運動強度をあげた時など)は息切れの増強呼吸困難の出現などの自覚症状はもちろん体重の増加や下肢の浮腫の増強と行った心不全の増悪の兆候は常に注意しなければなりません。それらが発現した場合、運動の強度を下げるあるいはかかりつけの循環器の医師の診察をうけるなどが必要となります。
いづれにせよ心不全に対する運動療法によるリハビリテーションは、その人の生命の予後に対して重要なのです。
以上、心不全に対する心臓リハビリテーションを概説しました。

お知らせの一覧を見る