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糖尿病と高血圧  その合併は

高血圧と糖尿病は合併する頻度は高いことはよく知られています。そして1型糖尿病(主に自己免疫を基礎にしてインスリンの欠乏が生じ発症する)および2型糖尿病(糖尿病患者の大多数を占める原因(遺伝因子に環境因子が加わる)で発症する)で高血圧が合併すると大血管疾患の発症および死亡のリスクが上昇することは示唆されています。たとえば糖尿病の人が収縮期血圧が10mmHg上昇すると大血管疾患による死亡は18%増加するという報告や、糖尿病と高血圧の合併している人は血圧の上昇により前記疾患の発症は有意に上昇し、収縮期血圧の有意な低下により心筋梗塞の発症リスク及び糖尿病に関連する死亡がそれぞれ15%、11%低下したとの報告があります。高血圧はまた糖尿病による細小血管障害(糖尿病性腎症、糖尿病網膜症、糖尿病性神経障害)のリスクとなることが1型糖尿病、2型糖尿病ともに報告されています。たとえば糖尿病性神経障害では高血圧はその発症リスクとなることは知られています。しかし1型糖尿病と2型糖尿病では高血圧の関与の違いが認められます。1型糖尿病では高血圧は神経障害の最も強い予測因子であり、高血圧の存在が6年間の神経障害発症のリスクを約4倍にすることが報告されています。一方2型糖尿病での高血圧と神経障害の関連は明確でなく、大規模の研究報告でも厳格な血圧のコントロールは糖尿病による神経障害の悪化を軽滅していません。糖尿病網膜症では高血圧の人の拡張期血圧値の10〜41mmHgの上昇で網膜症発症リスクは87%増加し、収縮期血圧値の17〜28mmHgの低下により網膜症の消失する可能性が20%増加したとの疫学研究などの多くの報告で高血圧が1型、2型をとわずその発症リスクとなることが示されています。糖尿病性腎症では1型糖尿病において高血圧は明確な腎症をもつ人に認められます。ある報告では、腎症(主として蛋白尿)のない人の高血圧の頻度は一般の人の高血圧の頻度より低い(3.9%対4.4%)とされています。一方2型糖尿病では高血圧は一般的に糖尿病腎症にさきがけて存在します。新しく診断された腎症なしの2型糖尿病の人の58%あるいは70%以上が高血圧であったとの複数の報告があります。このように糖尿病腎症は2型糖尿病よりも1型糖尿病で高血圧に先行しますが、両病型とも腎機能の悪化はさらに血圧上昇に関与し、一方高血圧の発症は腎機能低下に強く関与するのです。このように糖尿病の人にとって高血圧およびその良好なコントロールは非常に大切です。以前から幾度か説明したように糖尿病の人の高血圧の治療は診察室血圧で130mmHg以上かつまたは80mmHg以上で開始を考慮します。生活習慣などの修正によって1ヶ月を超えてこの値までの降圧が困難な場合は、降圧薬の服用が必要です。そして血圧が130/80mmHg未満に維持できた場合、上記に記載した大血管疾患(脳卒中など)や心不全の発症さらには細小血管障害の予防になるのです。糖尿病、高血圧の合併は危険です。ご留意下さい。

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