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心血管病と関節リウマチ

関節リウマチ(RA)はわが国において約33万人の人が罹患しているとされ(平成26年度厚労省集計)その患者数の多さからRA患者さんの虚血性心疾患(IHD)の合併は重要な問題となります。欧米ではRA患者さんは一般の人と比べると1.63倍致死的心筋梗塞が多いとされています。RA患者さんのIHDに罹患するリスクは年齢で調整した一般の人の約2.16倍であり、2型糖尿病の人の2.04倍とほぼ同程度とされています。以前の米国からの報告は、RA患者さんは一般の人とくらべ無痛性心筋梗塞(胸痛などの痛みを伴わない梗塞)は2.13倍、突然死は1.94倍多いとしています。その理由としてRA患者さんでは関節の局所で生じるとの同様の炎症が冠動脈にも生じておりかつ冠動脈に生じたプラーク(動脈硬化の強い病変)はRA患者さんでない人のプラークに比べより脆弱であるため前記が生じやすい。つまりRAの心血管障害のリスクはRAの炎症と関連しているとしています。この炎症と関連していることは他の多数の報告でも示されています。日本においてはRAのIHDのリスクを検討した研究は少ないですが、RAの罹病期間や重症度が心血管障害発症と関連することを示した報告はあります。またRA患者さんは一般の人とくらべ約1.5倍心血管障害による死亡が我が国では多いとした報告もあります。これらのことをふまえ心血管障害リスクを検討する指針ではRAの罹病期間が10年を超える場合、関節以外の症状がある場合、血流検査でRAを示唆する所見がある場合は心血管障害のリスクは1.5倍に評価されるとしています。一方でRAに対する最近の治療薬の出現により、RAの活動性が抑制されることによりIHDの発症が低下したことも示されています。次にRAは大血管病変(高安動脈炎、巨細胞性動脈炎などがあり、高安動脈炎では血管の内膜が肥厚して血管内腔の狭窄、閉塞を生じるとされている)をきたすことが報告されています。この場合もRAの活動性が強い時に大血管周囲の炎症が増強し、RAの活動性が低下するに伴い、大血管周囲の炎症も低下することが示されています。つまりIHDと同様にRAの大血管障塞を抑制するにはRAの活動性の抑制が大切となります。またRAは活動性が高いときには、心筋の障害をきたし、心筋の重量の低下、心臓からの血液拍出量の低下をきたすことも知られています。この場合も前記疾患と同様、RAの加療により活動性を低下させることにより、心臓の機能が回復するとの報告はあります。RAにおいてはIHDに比べ不整脈の研究は少ないとされていますが、RAの活動性が高い時には不整脈を介して突然死と関連するとの指摘はあります。このようにRAなどの「膠原病」では心血管障害は多く見られ、その治療においても避けては通れない問題です。しかしながらIHDにはRAの炎症自体が関与していることが多くの研究で示され、その活動性を抑制することの重要性が明らかとなっています。(特にRAでは治療は進んでいる)
以上、RAとIHDを中心とする心血管病との関連を説明しました。心臓と膠原病は密接に関係しています。周知下さい。

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