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高尿酸血症と心血管疾患

生活習慣やライフスタイルの昨今の変化に伴い、高尿酸血症の人が増加しており、リスクとなる痛風や腎臓結石、腎不全を生じる人は増加しています。循環器領域においては、高血圧発症のリスクである以外に虚血性心疾患や心不全、心房細動などと直接関連しているあるいはリスクであることが示唆されています。血清尿酸値は基礎疾患(痛風、糖尿病、脂質異常症、高血圧など)を持つ人では6mg/dl以下がよいとされています。心不全の人で尿酸値が上昇して7mg/dl以上の場合その人の死亡するリスクは2.1倍になるとの報告やさらに上昇して10mg/dlの場合死亡率が約6倍に上昇したとの報告などがあります。虚血性心疾患(冠動脈疾患)では心筋梗塞を発症した場合、血清尿酸値が高いほど長期の予後が悪いとの報告があり、また尿酸値が高いほど冠動脈疾患の病変が増加し、さらに病変数が増加するほど心臓の収縮する機能が低下することが示されています。逆に心臓の収縮する機能が低下するほど尿酸値が高くなることも示唆されています。心房細動では男性では血清尿酸値が6.5mg/dl以上、女性では4.9mg/dl以上でも発症と関係していることが示されています。また、血清尿酸値が1mg/dl以上上昇すると心房細動を発症する割合が約1.4倍になり高尿酸血症(定義上7mg/dl以上)になると約2.8倍になることが、わが国の研究から示されています。
ここで指摘しておきたいことは女性では血清尿酸値と心房細動の発症との関係性が強いことです。その背景には女性ホルモン(エストロゲン)が血清尿酸値を下げることであり、そのため閉経後には血清尿酸値が上昇しやすくなり、加齢とともに心房細動の発症が顕著となると考えられているのです。
このように血清尿酸値が高いほど心血管疾患の発症・重症度や生命予後が悪くなることは明らかになりつつあります。そのため上記の人の食事(アルコールの減料など)を含めた生活習慣の修正は必要です。
しかし血清尿酸値を低くする薬物の服用による心血管疾患の発症あるいは死亡に対する減少効果を示した研究報告は存在するものの、その研究数は少なくまた実績も充分ではないためその積極的な服用は推奨されていません。したがって血清尿酸値が高く心血管疾患を発症されている人は、発症された原疾患の治療をしっかりとされることです。治療は我々循環器医が尿酸管理に配慮して行います。
高尿酸血症は今回記さなかった種々の疾患のリスクとなります。ご留意下さい。

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