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頸動脈病変(狭窄)、 そのリスクは?

頸動脈の動脈硬化は全身の動脈硬化を反映するとされており、動脈硬化が強いと、脳梗塞、心筋梗塞などの冠動脈病変、下肢の閉塞性動脈硬化症などの血管病変のリスクが高くなるとされています。頸動脈の動脈硬化などにより生じるプラーク(動脈硬化の強い病変)、狭窄などは頸動脈エコー(時に経頭蓋ドプラー)で我々循環器医、脳神経医が主として評価します。
今回は頸動脈狭窄のリスクを脳梗塞を対象として説明します。頸動脈狭窄は狭窄率が高くなっても無症状なことが多く、注意が必要です。一般の人における無症候性頸動脈狭窄の頻度は、50%以上の中等度狭窄が0〜7.5%、70%以上の高度病狭窄は0〜3.1%であり、高齢の人および男性に多いとされています。これらが原因となる狭窄側の脳梗塞または一過性脳虚血発作の年間発症率は近年の内科治療の進歩・普及に伴い徐々に低下しており、概ね0.5〜2%程度と推察されています。しかし心臓関連死は約3%にみられ、年間の死亡率は7.7%に及ぶとの報告もあり、無症候ではあるが頸動脈狭窄の全身病としての認識が必要です。無症候性頸動脈狭窄・閉塞のある人の脳梗塞一次予防に有効な薬物は明らかではありません。そのため一般的な脳梗塞の一次予防としての禁煙、節酒、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの動脈硬化のリスクファクターに対する薬物・生活習慣の修正などによる管理が求められます。
頸動脈は内膜・中膜・外膜の3層構造になっており、そのうち内膜・中膜の肥厚(頸動脈エコーでの)が全身の血管疾患のリスクとされています。内膜・中膜厚(IMTという)についての報告では降圧薬や脂質異常症に対する薬、糖尿病薬(主としてピオグリタソン)および血栓の発症を予防する抗血小板薬(特にシロスタゾール)はIMT肥厚の進展の抑制や退縮効果があると報告されています。ただし、これらの薬は頸動脈病変、脳梗塞予防に対する明らかな証明はありません。高度の無症候性頸動脈狭窄は脳卒中の高リスクであり、そのため前述の内科的治療の効果を十分に検討し、また患者さんの生命予後、外科手術のリスクを十分に考慮したうえで頸動脈内膜剥離術(CEA)を行うこともあります。
高度の狭窄病変に対して、頸動脈の内膜にステントを挿入し、狭窄病変を拡張させる頸動脈ステント留置術(CAS)をCEAの困難な人あるいはCEAの代替療法としておこなうこともあります。現在CEAとCASの施術後の長期的な生命予後などの有効性を比較する研究がおこなわれています。
CASは適切な手術トレーニングを受けた医師のいる施設での施術が必須であり、広島においても徐々にCASをおこなう施設数は増加しています。
以上、頸動脈病変(狭窄)の血管疾患に対するリスクを中心に概説しました。
発症予防には生活習慣病の適切なコントロールの重要性がおわかりになると思います。ご留意下さい。

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