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感染性心内膜炎

感染性心内膜炎(IE)は心臓内部の弁膜や心内膜、あるいは大血管の内膜に細菌の集蔟を含む疣膜を形成し、菌血症、血管内の塞栓、心障害などの多彩な症状を呈する全身性の敗血症疾患です。発症率は100万人あたり年間10〜50人と高い疾患ではありませんが、いったん発症すると的確な診断のもと、適切に奏効する治療が行われないと多くの合併症を引き起こし、死に至ることもあります。発症には、心臓弁膜の疾患や先天性の心疾患に伴う異常な血流や、心臓弁膜を手術時に人工弁に取りかえたあとなどに異物の影響で生じる非細菌性血栓性心内膜炎(NBTE)が重要とされています。すなわちNBTEを有する人は歯科での処置、耳鼻咽喉科での処置、婦人科での処置、泌尿器科での処置などにより一時的に菌血症が生じると、NBTEの部位に菌が付着増殖し、疣腫が形成されIEに至ると考えられています。IEは上記のように何らかの基礎心疾患を有する人にみられることが多いとされています。基礎心疾患を有する人で、尿路感染症、肺炎などの菌血症を誘発する感染症を合併したり菌血症を生じうるような手技や小処置をおこなった後に持続する不明熱を訴える場合などはIEを疑う必要があります。しかし、ときに心疾患の既応のない人に発症することもあります。また薬物中毒(静脈注射をおこなう)の人は、弁膜が正常であってもIEの発症は考えておかないとなりません。IEの症状では発熱は約90%の人に認められ寒気や振戦を伴うことも多くあります。(約50%)食欲不振や体重減少(25%〜50%)易疲労感(45%)。呼吸困難(20〜40%)、胸痛(8〜35%)頭痛、悪心・嘔吐(15〜30%)など多彩な症状を認めます。しかし高齢の人や免疫能の低下した人では発熱を含めこれらの症状を欠く場合もあります。時に脳梗塞や腎梗塞などの塞栓症に伴う症状で発症することもあり、注意が必要です。IEの診断は敗血症に伴う臨床症状、血液中の病原微生物の確認(血液培養でおこなう)、疣腫をはじめとした感染に伴う心臓内部の構造の破壊の確認(心エコー、CT、時にPET/CT)に基づいてなされます。
治療は内科的治療あるいは外科的治療となります。内科的治療はIEの原因菌に対して殺菌性のある抗菌薬を十分量長期間にわたって使用することにより敗血症を治療し疣腫内の原因菌を死滅させることになります。外科的治療は内科的治療に抵抗性を示す感染症、進行する心不全、心内構造の破壊、感染性の塞栓症の可能性がある場合などで、これらの場合は早期の手術が考慮されます。これらの治療により治ユされた後、あるいは初頭で示した基礎疾患をお持ちの人は菌血症を誘発しうる前述の処置をおこなわれる時には予防的な抗菌薬の服用が必要とされています。IEは発症すると命にもかかわる恐い病気です。お知りおき下さい。

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