お知らせ

原発性アルドステロン症とは

原発性アルドステロン症(PA)とは副腎からの自律性のアルドステロンというホルモンの過剰な分泌により高血圧を呈する病気で、代表的な二次性の高血圧です。アルドステロンの過剰分泌より、血漿中のレニンというホルモンが低下し、またカリウムが低下することを多く認めます。病型としては副腎の片側に病変を認める(通常は副腎アルドステロン産生腺腫:APA)と両側の副腎の過形成(特発性アルドステロン症・IHA)に大別されます。高血圧の人におけるPAの有病率は5〜15%と報告されており、決して頻度は少なくありません。PAの人は年齢、性別、血圧が一致した本態性高血圧(EH)の人と比較して、脳卒中、心肥大、心房細動、冠動脈疾患、心不全、蛋白尿などの脳・心血管、腎の合併症の頻度が高いことがわかっています。そしてこれらの合併症には高アルドステロン血症程度、低カリウム血症、片側性病変などが主な寄与因子としてあげられています。またPAはEHと比較して肥満、耐糖能異常(糖尿病の予備群以上)、睡眠時無呼吸を合併する人が多いとされています。PAの有病率の高い高血圧の人の特徴として、低カリウム血症、治療抵抗性高血圧、40歳未満での高血圧発症、未治療治の血圧が150/100mmHg以上の高血圧、副腎腫瘍の合併、若年での脳卒中発症、睡眠時無呼吸症候群の合併などがあげられています。PAであるかどうかのスクリーニングとしては血液検査でアルドステロンの濃度、レニンの濃度を測定します。これによりPAの可能性が高い人は4種類ある機能確認検査のうち一種類以上をおこなってもらいアルドステロンの自律的な体内での過剰な産生を確認します。(機能確認検査は血管カリウム、ホルモンの値などより、PAが確実と考えられる場合、省略することもあります。)こうしてPAと診断された人は、APAかIHAかの鑑別そして治療の選択のために病型・局在診断をしていただきます。病型・局在診断は副腎のCT撮影をおこない、APAの可能性が高い場合は副腎静脈にカテーテルを挿入してアルドステロンなどの濃度を測定し、確定診断とします。(これをAVSという)このAVSは侵襲的かつ技術を要する検査のため熟練した専門施設での実施が必要です。また典型的なPAの臨床初見(低カリウム血症、副腎の腫病、アルドステロン高値)を呈する35歳未満の人は片側性病度であるAPAの可能性が高いため、AVSを省略し、患者さんとの相談の上、次に記載する治療を考慮することも可能とされています。両側性病変(主としてIHA)の人は血糖カリウムの濃度が正常範囲で、CTで径1cm以上の副腎の腫病が認められないことがほとんどです。(約94%)
PAの治療は片側性のPA(主としてAPA)の人では、病態の治ユ、過剰なアルドステロン分泌と高血圧の正常化、臓器障害の改善と進展防止が期待できるため、患側の副腎の摘出手術が推奨されます。(腹腔鏡下での手術が可能)しかし手術を希望されないあるいは適応がない場合、両側性病変の人は薬物服用による治療をしていただきます。
片側性のPAで手術をされた人は高血圧の罹病期間、術前の高血圧の重症度、腎機能、年齢などより血圧の正常化率は約30%と報告されています。したがって両側性PAの人はもちろん片側性PAの人も手術の有無をとわず、生命予後改善のために長期的な病態および経過の観察は治療と伴に必要となります。
二次性高血圧であるPAは頻度の高く合併症の多い病気です。上記にあげた臨床的特徴をお持ちの人は我々循環器医への早めの受診をお勧めします。

お知らせの一覧を見る