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急性心筋炎とは

新型コロナウイルス感染症のまれな合併あるいはコロナワクチン接種後のごくまれな副反応として急性心筋炎が発症することはマスコミの報道などで知られている人はおられるかと思います。今回は急性心筋炎とはどのような病気かを説明します。急性心筋炎とは心筋に急性に発症する炎症性疾患です。心臓をおおう心膜まで炎症が及ぶと心膜心筋炎とも呼ばれます。軽症あるいは無症候な人もおられるため、日本における心筋炎の発症率や死亡率の詳細は不明です。急性心筋炎の多くは細菌やウイルスなどの感染によって発症します。感染症以外にも薬物、放射線、熱などの物理的刺激、あるいは代謝や免疫の異常さらには妊娠も原因となります。原因が特定できないものは突発性心筋炎と呼びます。多くの急性心筋炎患者さんはかぜ様症状(発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、全身倦怠感など)や食欲不振、悪心、嘔吐、下痢などの消化器症状が先行します。その後、数時間から数日の経過で心臓の症状が出現します。心臓の症状としては@心不全症状(約70%に出現)A胸痛(約44%)B不整脈(約25%)に随伴する症状があります。しかし軽症な人を含めるとこれらの臨床上の症状が明白な心筋炎の人はまれとされています。すなわち単なるかぜ症状や消化器症状のあと極めて短期間に心臓・肺の危機状態におちいり、致死的経過を取られる劇症型心筋炎の人がおられるからです。そこで急性心筋炎の人の身体所見として、発熱、脈の異常(頻脈、遅い脈、脈が不整)、低血圧などが着目される所見となります。(症候のある人では)急性心筋炎の診断は血液検査、胸部X線、心電図、心エコー図、心臓MRI、X線CT、などがおこなわれますが、診断を確定するには心臓カテーテル検査により心内膜の心筋を採取し、(心筋生検という)その組織像で活動性の 病変を確認することが必要です。(症状が重篤でカテーテル検査ができない人も少なくありませんが、その場合はカテーテル検査以外の検査や症状などより診断を推定することになります)
心筋炎は無症状から突然死まで幅広い病像を示しますが、基本的には1〜2週間炎症期が持続した後に回復期に入ります。しだがってこれらの症状の期間の慎重な加療が必要です。
炎症期においても心臓の症状が顕著でない人の場合は急変を常に注意しながらも入院したうえでの注意深い経過観察のみで対処できます。不整脈や心不全症状が出現した人には、それらに対する治療を症状の種類や程度に応じておこないます。回復期では心臓の退行変性が軽快せず慢性心不全になられた人あるいは不整脈が残存している人ではそれらに対する長期的な治療及び経過の観察が必要となります。このように急性心筋炎は生命予後の良好な人が居られる反面、遠隔期において慢性心不全などにより死亡される人が少なからずおられます。したがって発熱し冒頭で記載した心臓の症状がでられた場合などは、当院など循環器内科へ受診することを頭の中に入れておいて下さい。心筋炎の概略を説明しました。

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