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患者さんの質問に答える(パートX)

コレステロールが高い 治療はしないといけないのか? 40代前半の女性

血液中のコレステロール(総コレステロール、LDLコレステロール)の上昇は女性においても冠動脈疾患など動脈硬化性疾患の重要な危険因子です。このことは今までにおこなわれた多くの研究で明らかにされています。そのため血液中のコレステロールが高値な人はコレストロールを低下させることは重要かつ必要です。
女性において薬の服用によりコレストロールを低下させた場合、65歳以上では不安定狭心症、心筋梗塞などの急性冠症候群や脳血管障害などの発症のリスクは有意に低下したあるいは55歳以上の女性で冠動脈疾患、脳梗塞発症のリスクが有意に低下したなどの報告やその他にも動脈硬化性疾患の発症リスクを低下させ有用であるとの報告はあります。しかし女性の動脈硬化性疾患の発症は男性と比べると少なく、このことは閉経期以降においても同様です。(発症の男女差は縮小する)また薬の服用による発症の予防効果は男性に比べて強くありません。さらに閉経前の女性の冠動脈疾患に対するコレステロール高値のリスクを証明する研究報告はありません。したがって女性の高コレステロール血症に対しては生活習慣の修正が中心となります。すなわち非喫煙(喫煙の冠動脈疾患発症のリスクは男性よりも強い。また喫煙者は非喫煙者とくらべ心筋梗塞の発症率が3〜8倍高い。)運動量の増加、適正体重の維持、適度な飲酒、食習慣の適正化などです。上記の因子を多く有する人ほど冠動脈疾患や心突然死のリスクが減少し、さらに上記5因子をすべてもつ女性の脳梗塞発症リスクはそうでない人とくらべ極めて低いことが報告されています。このことは閉経前の若年女性を対象とした検討でも同様なことが示されています。つまり女性においては若年時からの健康的な生活習慣の維持が動脈硬化性疾患の予防のかなめとなるのです。ただし閉経後の女性の場合、生活習慣の修正は優先されるものの動脈硬化性疾患のリスク(喫煙、高血圧、低HDLコレステロール、糖尿病の予備群など)の高い人は薬の服用も必要となります。また閉経前の女性であっても家族性高コレステロール血症(受診された場合説明します)や冠動脈疾患がありその二次予防のため、および上記動脈硬化性疾患の高いリスクの人には薬の服用が考慮されます。
また高コレステロール血症以外の併存症がある場合(特に糖尿病は男性に比較し女性の冠動脈疾患のリスク上昇と関連する)その良好な病状の維持は必要です。
質問の女性の場合、上記を考慮され、医師と検討されることをお勧めします。以上

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