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検尿中の尿蛋白出現の病的なリスク(知っておいてもらいたいこと)

蛋白尿は腎臓に血液を送る微小な動脈である系球体の障害に起因して生じます。蛋白尿は腎臓・固有の病気である系球体腎炎などの他、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病、加齢などにより出現し、この出現は腎臓の機能障害を意味します。そして3ヶ月以上持続する蛋白尿(血液、画像診断の異常のある場合も含む)毎分あたり系球体から尿細菅に濾過されてでてくる液量であらわされるeGFRの低下のどちらかまたは両方がある場合を慢性腎臓病(CKD)と定義します。蛋白尿は糖尿病あるいはそれによる腎障害(糖尿病性腎症)のある人では、尿中のアルブミンを定量することにより測定し、高血圧などそれ以外の人では尿中の蛋白を測定します。しかし一般の診療所や健康診断などでの実臨床では試験紙を用いた定性的な判定をすることが一般的におこなわれています。±、+、2+、3+などの判定です。それは定性的な判定が測定された尿中のアルブミン量や蛋白量と相関し、反映されているからです。たとえば試験紙法で尿蛋白(1+)はアルブミン30mg/dl、尿蛋白(2+)は100mg/dl(±)は10〜15mg/dlに相当します。(腎臓病の学会では1+は30〜299mg/dl 2+以上は300mg/dl以上としている)そしてここからが本題にはいりますが、尿蛋白が出現し(定性で1(+)以上)継続するということは定性で(−)や(±)の人とくらべ末期の腎不全(すなわち腎代替療法といわれる透析や腎移植が必要となる状態)に至るリスクが高く、なおかつ腎不全になり腎代替療法へ移行する以前に心筋梗塞や脳卒中などの脳心血管病を高卒に発症することが明らかになっているのです。たとえば心血管死のリスクは尿蛋白1(+)の人は(−)や(±)の人の1.47倍、2(+)以上の人は2.44倍高くなり、末期腎不全のリスクは1(+)の人で2.5倍、2(+)以上の人では38倍と用量依存性に高くなるとされています。すなわち尿中への蛋白出現は重大で看過できない問題なのです。
ではこの尿蛋白の出現そしてCKDの発症あるいは進展抑制に対してどうすればいいのでしょうか?
それはその原因となっている病気に対する厳格な治療(生活習慣の修正・服薬など)が必要ということになります。たとえば糖尿病の人では、1日を通しての血糖の良好なコントロール(最近服用できるようになった薬にはアルブミン尿の発症および持続を抑制することが示唆されているものがある。ただしコントロールにおいて低血糖は防ぐ)高血圧の人は血圧の厳格なコントロール(蛋白尿の出現している人にはそれを減少させる効果が判明している薬を最初に服用する。ただし上の血圧を110mmHg以下にはさげない)をすることです。
この両者を併存しておられる人は多く、さらに脂質異常症のある人はLDL-コレステロールを低下させる薬の服用も推奨(提案にもなるが)されています。メタボの人はまずは食事・運動療法や生活習慣の修正をおこない減量することが望ましいと思われます。
その他の病気に対しても同様でその病気をしっかりと治療されることが肝要です。蛋白尿は重要です。時々検査されることは必要と考えます。

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