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血液をさらさらにする薬はいつまで服用するの?(冠動脈の血管内治療をうけた人の質問)

急性冠症候群(ACS)の患者さん(心筋梗塞、不安定狭心症など)や慢性冠動脈疾患の患者さんで冠動脈の閉塞あるいは強い狭窄をきたしている場合、閉塞や狭窄部より遠位の心筋細胞は血流の途絶や減少により壊死や強い虚血におちいります。そのため心筋細胞の壊死領域を広げない、あるいは虚血を解除するために、冠動脈内にカテーテルを挿入し、閉塞あるいは狭窄部を広げ、ステントという金属製の挿具を同部位に留置し再狭窄を防ぐ、あるいは患者さんの状態や冠動脈の狭窄の部位、狭窄の病変数によっては手術(冠動脈バイパス手術)をおこないます。それにより狭窄より遠位の冠動脈の血流を回復させ、心筋細胞の虚血や壊死領域の広がりを防ぎます。そしてこれらの手技の修了後は患者さんの状態を慎重に観察しながら、原疾患(高血圧、糖尿病など)や心不全を併発している場合はそれらに対する加療をおこないます。そして心血管のトラブル(再度の冠動脈の狭窄)を減少させることが明らかになっている脂質を低下させる薬を患者さんに服用していただきます。その上で今回ご質問の血液をさらさらにする薬(抗血小板剤という)を冠動脈内のステント留位部への新たな血栓形成の予防あるいは新たな冠動脈内の血栓形成予防目的で服用していただくようになります。血液をさらさらにする薬は上記予防のため初期は2剤(心房細動を合併している人は主として入院期間(約2週間)は3剤)服用していただくことになります。2剤服用期間は患者さんの出血リスクと血栓形成リスクを勘案して決定しますが、主として出血リスクを優先して服用期間を決めます。出血リスクとは低体重(フレイル)・心不全、貧血、末梢血管疾患、慢性腎臓病(CKD)、脳血管障害、活動性の悪性腫瘍、血小板の減少などであり、血栓リスクにはステント内血栓症の既応、心筋梗塞の既応、冠動脈の治療に要した狭窄病変数が多い場合、糖尿病の合併、CKDなどがあります。
そして上記を考慮して患者さんがもとめられる服用期間は、おおむね1〜12ヶ月です。2剤服用期間中、心血管事故や副反応(主として出血、消化管出血や頭蓋内出血を頻度は低いが惹起することがある)などが生じなかった場合、血液をさらさらにする薬は2剤より1剤に減量して服用していただきます。1剤の服用期間はより長期に、できれば生涯を通じて服用を継続していただくことになります。これは血栓形成それによるACSなどの再発予防のために必要となるからです。以上血液をさらさらにする薬の服用は大切です。ご理解下さい。

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