お知らせ

糖尿病ではないが、血糖値が高いといわれた(健診) 糖尿病になりたくないがどうすれば良いか?(質問)

質問内容からは境界型糖尿病(空腹時血糖値110〜125mg/dl、糖負荷試験での2時間血糖値140〜199mg/dl)を健診で指摘されたと考えられます。確かに2型糖尿病の発症を予測するうえで血糖値やHbA1c(血液検査前1〜2ヶ月の血糖のコントロール状況をあらわす指標)は最も強力な因子です。血糖値やHbA1cはともに糖尿病発症10年前より糖尿病非発症者よりも高値を示すようになり、空腹時血糖値が100〜125mg/dl(正常は100mg/dl未満、100〜109mg/dlは正常高値)とHbA1c5.7〜6.4%(正常は5.5%以下)の両方を満たす人は正常な人とくらべ糖尿病の発症リスクが約30倍にも上昇するとの報告があります。また肥満度と2型糖尿病の発症との間には強い関係が存在し、BMI(肥満指数)の増加がそうであり、日本人では欧米人とくらべその増加が強くなくても発症リスクとなるとされています。体重の増加に関しても成人早期(18〜24歳)の体重増加は、25歳以降で増加するよりも2型糖尿病の発症リスクと強く関連すると報告されており、生涯にわたる体重のコントロールは必要ですが、特に成人早期の体重を適正に維持することは重要です。BMI増加に関連する内臓脂肪型肥満を有する人は、体内の代謝の異常を合併していなくても2型糖尿病の発症リスクは高いことも指摘されています。減量効果に目をむけると、日本人では生活習慣の改善により2kg程度やせることができれば2型糖尿病の発症リスクを減らせるとされており、高度な肥満の人では減量手術を受けることで発症リスクが劇的に低下します。身体活動量ではその増加は2型糖尿病の発症リスクを低下させます。運動のしすぎによる発症リスクの増加はなく、仕事や通勤などの日常的な身体活動量においても、その多い人は2型糖尿病の発症リスクは低下します。すなわち低負荷から高負荷のあらゆる強度の運動は発症予防に有効となります。運動においては有酸素運動のみならずレジスタンス運動(筋力トレーニング)も発症リスクと関連し、両者を組み合わせた運動は発症リスクを大幅に低下させるとされています。一方テレビの視聴時間(1日で2時間以上)や日中座って過ごす時間が長いことや1日の歩行時間が30分未満であることは2型糖尿病の発症リスクを増加させます。よって日常生活のなかでわずかでも身体活動量を高める努力は大切です。食事摂取に関しては炭水化物、タンパク質、脂質などを各論的に記載すると、全粒穀物、豆類などの食物繊維、果物や緑黄色野菜、そしてこれらと関連の深いポリフェノール類、牛乳を含めた乳製品やヨーグルトなどの摂取は2型糖尿病の発症リスクを低下させます。一方、白米の多い摂取、豚肉・牛肉などの赤身の肉や加工肉の摂取、肉と関連する鉄の摂取どは発症リスクを高めます。なお食事性コレステロールや卵の摂取と2型糖尿病の発症リスクは日本人においては有意ではありません。飲料においてはコーヒーやお茶(緑茶)の摂取は発症の予防になるとされています。砂糖を含んだ飲料や人工甘味飲料は発症リスクの増加となります。アルコール摂取は日本人においては適量でも発症予防のための推奨はされていません。
喫煙は受動喫煙を含め2型糖尿病の独立した危険因子であることは確立しています。禁煙すると体重増加による2型糖尿病の発症リスクが一時的に増加しますが、長期的にはリスクの低下となり、禁煙は重要です。
睡眠はその持続時間と2型糖尿病の発症リスクは関連し、睡眠時間が7〜8時間で発症リスクが最も低くなり、それより短時間の睡眠であれ、長時間の睡眠であれ、発症リスクは増加します。また入眠困難や睡眠維持困難、1日1時間以上の昼寝、中等症〜重症の睡眠時無呼吸は発症リスクを増加させます。
その他精神的な要因や労働・社会環境が2型糖尿病の発症リスクとなりますが、ここでは記載しません。今回上記に記したように2型糖尿病の発症予防あるいは発症リスクの低下のみならず、発症リスクの増加も重点において説明しました。参考としてください。

お知らせの一覧を見る