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心臓リハビリテーション

高血圧、糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病はもちろん、循環器疾患(心筋梗塞後、心不全症など)、慢性腎臓病、呼吸器疾患(COPDなど)多くの病気に対する運動療法(運動リハビリテーション)は、各々の疾患の状態およびそれらに罹患している人の生命予後の改善に有益であることは確立されています。
今回は心臓リハビリテーションについて説明します。心臓リハビリはわが国においてその普及はまだ立ち遅れているのが現状ですが、その目的は心疾患の再発や再入院予防(二次予防)のみならず発症予防(一次予防)にあります。運動リハビリは動脈硬化を防ぎ、体力レベルの維持・向上そしてそれによる生活の自律を通じてQOL(生活の質)の向上に役立ちます。心臓リハビリは冠動脈疾患、心不全、心臓手術後、不整脈などの疾患への罹患後、急性期、回復期(前期回復期と後期回復期)、維持期と各段階ごとにその到達目標を決めておこなわれます。急性期、前期回復期は主として入院中に心臓リハビリ室でおこなわれ、後期回復期、維持期のリハビリは退院後社会復帰をめざし、それが達成された場合、その獲得した運動能力を維持しながら生涯を通じておこなわれれるべきものです。そして当院は維持期の心臓リハビリの人に関わることになります。心臓リハビリ(運動療法を中心とした)の生命予後改善は実証されています。たとえば包括的な心臓リハビリに関しては総死亡を0.8倍、心血管死亡を0.78倍、到死的な心筋梗塞は0.75倍に通常の投薬治療をされている人に比べて減少させると報告されています。冠動脈疾患や心不全の人に対する心臓リハビリによる同様な効果報告もあります。それでは心臓リハビリはどのようにすればよいのでしょうか。心臓リハビリは頻度・強度・時間・種類をその原則に従って実施することが推奨されています。頻度:高強度(6METs以上)の運動を実施する場合は週に3回以上、中強度(3〜6METs)から高強度の運動を組み合わせる場合は週3回〜5回、低強度(3METs未満)から中強度の運動の場合は週5回以上とする。強度:個々の人の運動能力や運動時のリスクを評価して運動強度を決めるには運動負荷試験による評価が必要となります。しかし運動負荷試験が施行困難な人もしばしば見受けられます。その場合は簡易心拍処方(安静時心拍数+30/分の強度、ある種の薬を服用している場合は別)、自覚的運動強度(Borg指数で表わされ、その12〜13(楽である〜ややつらい)、心不全の人の場合は11〜13)、TalkTest(快適に会話しながらおこなえる運動強度)で運動強度を設定します。時間:運動の持続時間は1回あたり最低10分を目標とします。ただし運動能力が高度に低下している人では10分未満の運動から始め、1〜5分ずつ運動の回数と伴に漸増します。そして最終的に20〜60分間を目標とします。種類:歩行、ジョギング、自転車走行、ダンス、水中運動などが推奨されています。その人が快適に長期間継続できることが多いからです。近年これらの運動(有酸素運動)と合わせてレジスタンストレーニングをおこなうことの有用性が明らかになっています。レジスタンストレーニングは筋力・筋持久力向上、除脂肪体重の増加、インスリンの感受性の改善、転倒予防、腰痛や肥満などの慢性疾患の予防・管理などのためにおこなわれるのです。レジスタンストレーニングも実施にあたって有酸素運動同様に頻度・強度・時間・種類の原則に従って実施します。頻度は2〜3回/週、強度は一回最大挙上重量(1RMという。一定量のおもりで目的とする運動を2回はできないが1回運動することが可能という意味)の40〜60%、または顕著な疲労なく繰り返し10〜15回できる強度、Borg指数の11〜13(楽〜ややつらい)から開始する。時間は大筋群を中心に8〜10種類の運動を1〜3セット、30〜45分間が推奨、種類はダンベル、鉄アレイやゴムチューブの弾性を利用する方法などがあります。以上、心臓リハビリをおこなうことは非常に有用ですが、日々のリハビリが施行できない場合もあります。詳細は記しませんが、たとえば3日以内の呼吸困難、易疲労感などの増悪、ゆっくりとした労作で胸痛が出現する場合(心筋虚血)、血圧が高値(上が200mmHg以上あるいは下が110mmHg以上)、コントロールできない不整脈、急性全身性疾患あるいは発熱などです。また運動リハビリ中、中止を希望される場合は運動は中止して下さい。たとえば胸部症状(胸痛・息切れ・動悸)や他の自覚症状(めまい、頭痛、低血糖発作と思われる場合、下肢痛、気分不良、強い疲労感、関節痛、筋肉痛)の悪化が認められる場合です。
今回は心臓リハビリを中心に解説しました。参考にして下さい。

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